激甚化する自然災害に対し、インフラを一刻も早く復旧することが求められています。その起点となるのが、被害状況を正確に把握する測量です。しかし、崩落現場や浸水地域などの危険区域では、従来のインフラ測量だけでは安全性やスピードに限界が生じることがあります。
そこで注目されているのが、ドローンや3Dレーザースキャナーを用いた、迅速で安全な3Dインフラ測量です。アジルジオデザインは最先端の空間情報技術を活用し、災害時にも対応できる高精度な測量機器を提供しています。
本記事では、災害復旧で測量が果たす役割と、インフラ復旧を加速させる測量技術、3D点群データの活用メリットを解説します。
▼この記事のポイント
- ドローンや3Dレーザースキャナーは、危険区域への立ち入りを減らし、被災状況を迅速に測量できます。
- 3D点群データは、被害分析や土量計算、変位監視、遠隔地との情報共有に活用できます。
- 測量データをBIM/CIMやICT施工へ連携すると、設計から施工までの復旧工程を短縮できます。
災害復旧における測量の重要性と直面する課題
災害発生後に迅速で実行可能な復旧計画を策定するには、被災現場の正確かつ詳細なデータが欠かせません。本章では、初期対応で測量が果たす役割と、従来手法が直面する安全性・時間・人員の課題を解説します。
初期対応における迅速な現況把握の必要性
災害後の初期対応では、被害規模を正確に把握し、現況を数値化することが第一歩です。
大地震や集中豪雨による道路寸断、河川氾濫、斜面崩落は、人々の生活基盤を根底から揺るがすため、行政や建設各社は一刻も早い対応を迫られます。崩落した土砂の幅、損傷した道路の長さ、えぐられた河床の深さなどの具体的な数値が分からなければ、そもそも復旧の第一歩となる計画を具体化できません。
正確な現況データは、その後の工法選定や重機・資機材の適切な配置計画に直結します。仮設道路を通すルート、大型土のうの必要数、投入する油圧ショベルの規模と台数などのリソースマネジメントは、すべて初期の測量データをもとに組み立てます。
データが誤っていたり取得が遅れたりすると、手配した重機が現場へ進入できないなどの手戻りが発生します。
さらに、初動の遅れはドミノ倒しのように社会的・経済的リスクを連鎖的に甚大化させます。道路や鉄道が遮断された状態が長引けば、地域インフラの孤立化が進み、救急車両の通行や支援物資の輸送が滞る事態を招きかねません。
二次災害のリスクと安全性確保
被災直後の現場は不安定で危険に満ちており、作業員の安全確保が最優先です。集中豪雨が去った後も、山間部の地盤は大量の水分を含んで緩み、追加の土砂崩れや地すべりがいつ起きてもおかしくありません。
余震が続く震災直後には、構造物のさらなる倒壊や崖面の新たな崩落も懸念されます。この環境で肉眼による確認や徒歩での立ち入り調査を行えば、作業員を文字どおり命の危険にさらすことになります。
従来のインフラ測量では、トータルステーションとプリズムを使う手法が主流でした。この手法は非常に高い精度を得られる一方で、計測したい地点に作業員がプリズムを持って直接立つ必要があります。崩落しかけた斜面の直下や激しい濁流が渦巻く河川付近など、一歩足を踏み外せば大事故につながりかねない場所にも人を配置しなければならない点が、人力計測の限界です。
その結果、安全を100%確保できるまでは、測量作業自体を止めざるを得ません。立ち入り禁止区域や、物理的に登れない急傾斜地では、安全確保のために測量そのものができないというジレンマが生じます。目の前の被害を早く復旧しなければならない焦りがあっても、人を守るために現場へ近づけないという強い矛盾が、災害復旧の障壁となっていました。
従来型測量の問題
従来型測量には、安全性の問題に加えて、作業時間と必要な人員の両面にも無視できない大きな問題と課題があります。
トータルステーションなどによる従来の測量は、点を計測し、それらを結んで断面図などの線を作る作業が基本です。広範囲の被災状況を網羅するには、無数の点を一つずつ手作業で計測し続けなければなりません。
この工程には非常に手間がかかり、複雑に変形した被災現場全体を図面化するまでに、数週間を要するケースもありました。一刻を争う災害復旧でデータを数週間待つことは、復旧計画そのものが止まることを意味します。
また、必要な人員の確保も深刻な問題です。建設・測量業界では少子高齢化と熟練技術者の不足が課題となる一方、大規模災害時には限られた地域で、同時に無数の測量需要が爆発的に発生します。このような有事に、高度な計測技術を持つ熟練の測量技術者を、必要な人数だけ自社の現場へ即座に配置することは困難です。
さらに、着工にこぎ着ける前段階の行政手続きにも時間がかかります。国や自治体から復旧予算の割り当てを受け、正式に現場へ着工するには、被災報告や災害査定などの行政手続きを終える必要があります。
その際、被災前後の差を明確に示す正確な図面や膨大な証明書類が求められます。従来手法では、現場計測からデータ入力、CADによる作図まで、すべての工程に時間を要します。書類提出の遅れが予算決定の遅れにつながり、現場の重機が動き出すまでに長い空白期間が生じるという悪循環が常態化していました。
災害復旧を加速させる測量技術
危険な被災地を安全に測量し、作業スピードも向上させるには、現場条件に応じて最新技術を使い分けることが重要です。ここでは、災害復旧に不可欠となりつつあるドローン、3Dレーザースキャナー、移動型計測を説明します。
ドローンを活用したレーザー測量
災害現場の上空を飛ぶドローンは、人が立ち入れない崩落斜面や浸水地帯にも安全に接近できるため、インフラ復旧で期待される革新的な技術です。数十分で数ヘクタール規模の広大な被災範囲を一括してスキャンすることが可能になりました。
ドローン測量には、写真測量とレーザー測量の2つの方法があります。地表が露出した開けた場所では、連続撮影した高解像度写真をもとに、SfM技術でリアルな色彩の3Dモデルを作る写真測量が有効です。
一方、日本の災害現場には、樹木や草むらに覆われた山林斜面が多くあります。写真測量では葉の表面しか写らず、木々の下で土砂がどのように崩れたかを把握できません。
そこで効果を発揮するのが、近赤外レーザーを搭載したUAVレーザー測量です。ドローンから照射するレーザーパルスは、葉や枝の隙間を通って地表へ届き、反射して戻ります。マルチエコー技術でファーストエコー、セカンドエコー、ラストエコーを識別・分離すれば、植生をデジタル上で取り除き、地表面だけの正確な地形データを可視化できます。
水害現場では、水が計測の障壁になります。通常の近赤外レーザーは水面で吸収・反射され、水底まで届きません。そこで、水を透過する性質を持つグリーンレーザー測量を活用します。水が濁っていなければ、水面下の地形や河床形状まで上空から連続して計測できます。
このように、ドローンによる空間情報の取得は高い機動性と安全性を備え、災害直後の混乱期に被災状況を把握するうえで優位性を発揮します。
地上型3Dレーザースキャナーによる精密計測
地上型3Dレーザースキャナーは、空から広域を捉えるドローンのマクロな視点に対し、地上からミリ単位の超高精度データを非接触で取得する装置です。周囲へ数百万発のレーザーを照射し、対象物までの距離と角度を測ることで、構造物や地形をデジタルデータとして記録します。
災害時における地上型3Dレーザースキャナーの強みは、離れた場所から構造物を診断できる点です。大地震で損傷した橋梁部材の位置ずれ、トンネルのコンクリート壁面の内空変状、大型構造物の微細な変形は、肉眼や従来の計測器では見落とす恐れがあります。3Dレーザースキャナーなら、対象に触れず、離れた場所から形状をミリ単位の精度で把握できます。
計測時に、崩落の恐れがある斜面や倒壊リスクのある建物の直下へ行く必要はありません。数百メートル離れた安全な場所に三脚を立て、スキャナーを設置します。
遮蔽物による死角を減らすため、複数地点から同じ対象を計測し、各地点の点群データをPC上で合成・処理します。これにより、現場の状況を死角のない3次元データとして可視化できます。
取得した高密度の点群データには、浮遊する虫や空気中のちりなど、不要なデータを取り除くノイズ処理を施し、座標系を整理します。きれいに整えたデータは、現状確認だけでなく、その後の復旧に向けた設計モデルの作成や詳細な施工計画の立案、ICT建機を動かす3次元施工データを作る際の信頼性の高い基礎資料となります。
モバイルマッピングシステムとウェアラブル計測
モバイルマッピングシステムは、広範囲の道路インフラを移動しながら短時間でデータ化する技術です。自動車のルーフに、高精度な3Dレーザースキャナー、GNSSアンテナ、高性能カメラ、IMUなどを一体化したユニットを搭載します。
災害時は、この車両を被災地の道路で走行させるだけで、時速数十キロの通常の交通流に乗りながら、道路の亀裂・段差、沿道斜面の崩落、ガードレールや電柱などの被害を連続的かつ網羅的に計測できます。作業員が道路上へ降りて三脚を立てる必要がないため、二次災害のリスクを極限まで抑えながら、主要幹線の早期交通開放を判断する広域データを1日で収集できます。
ただし、車両が進入できないほど寸断された現場や、崩壊した建物・トンネルの内部、細い林道や山間部の徒歩ルートでは、車載型MMSを使えません。こうした場所では、さらに機動性を高めたウェアラブル計測技術が活躍します。
ウェアラブル計測には、バックパックのように背負うタイプや手で持って歩くタイプのSLAMスキャナーがあります。SLAMは、自己位置の推定と周囲の環境地図の作成を同時に行う技術です。
GPS電波が届かないトンネルの奥深くや崩落したビル内でも、技術者が装置を身につけて歩くだけで、その軌跡に沿って周囲の空間がリアルタイムで次々と3Dデータ化されます。これにより、従来はデータの空白になりやすかった狭隘地や屋内の被害状況も、短時間でデジタル空間へ取り込めるようになりました。
点群データが災害復旧にもたらすメリット
取得された高精度な3D点群データは、図面作成だけでなく、被害分析、変位監視、情報共有、施工への連携にも多くの価値を発揮します。本章では、点群データが災害復旧にもたらす主なメリットをより具体的に説明します。
見落としのない被害分析
3D点群データは、現場全体を面として正確に記録するため、従来測量の測り漏れを抑えられます。従来は、あらかじめ決めた特定のラインに沿って計測するため、ライン間の微細な崩落や構造物の変形を見落とすリスクが常にありました。
点群測量では、空間全体を数千万、時には数億個の座標を持つ点の集合として丸ごと記録します。そのため、現場の形状をそのままデジタル空間に保存できます。
面のデータが持つメリットの一つは、スピードと高い精度を両立して土量を計算できることです。土砂崩れの復旧では、撤去する土砂量を正確に把握しなければ、ダンプカーの手配や工期を決められません。
点群データなら、被災後の3Dデータと災害前に国や自治体が整備した地形データをPC上で重ねられます。2つのデータの差分から、崩落した土砂の体積や、逆にえぐられて不足した土量を数クリックで自動かつ正確に計算できます。従来は数日かかった計算を、数分で終えられます。
点群データは、時間の経過を可視化する変位解析にも有効です。数日ごとに同じ場所をスキャンしてデータを重ねると、斜面が毎日数ミリずつ動く、構造物がわずかに傾き始めるといった、肉眼では気づけない微視的な地殻の挙動や崩落リスクの高まりを捉えられます。二次災害が起きる前に現場から避難するなど、高度な安全管理につなげられます。
遠隔地とのリアルタイムな情報共有と合意形成の迅速化
3D点群データは、危険な現地へ何度も移動せずに状況を共有できるため、災害復旧の意思決定を迅速化します。従来は正確な状況を把握するため、発注者である自治体の担当者やゼネコン本社の技術チームが、危険な現地へ繰り返し足を運ぶ必要がありました。点群データがあれば、その必要性を減らせます。
取得した点群データを大容量のクラウドサーバーへアップロードすれば、世界中のどこからでもアクセスできます。現地の対策本部、遠く離れた本社の専門家チーム、発注者である自治体の担当者が、各自のPCやタブレットから全く同じ3D被災現場を同時に見ながら、Web会議を行えます。
3D点群データは、誰が見ても直感的に理解しやすい可視化にも強みがあります。従来の2次元平面図や断面図から実際の地形の起伏や危険度を正確に読み解くには、専門的な訓練が必要でした。自由な角度から見回せ、色情報や高低差をカラー表示した3Dモデルなら、土木用語に詳しくない行政の意思決定者や地域住民にも、どこが危険で、なぜその工法が必要なのかを分かりやすく伝えられます。
その結果、現場への移動にかかる時間や、関係者への説明資料を作成する手間を完全に排除できます。正確かつ客観的なデータをもとに関係者全員が瞬時に同じ状況を認識できるため、復旧方針の合意形成が素早く進み、プロジェクト全体のタイムラグを大きく短縮します。
BIM/CIMやICT施工へのシームレスな連携
点群データは、その後の施工フェーズとの連携にも活用できます。デジタル空間に再現した被災現場の点群データをもとに、3D CAD上で復旧する構造物の設計モデル、すなわちBIM/CIMモデルを短時間で構築できます。現場の凹凸を最初から正確にデジタル化しているため、現物に合わせた精密な設計を初期段階から行えます。
この3D設計データは、そのままICT施工へ引き継げます。現在の建設現場では、GNSSや自動追尾トータルステーションと連動するICT建機の導入が進んでいます。PC上で作成した3D設計データを、重機に搭載するマシンコントロールやマシンガイダンスシステムへ無線で転送します。
これにより、従来の施工に必要だった現場への丁張り設置が完全に不要になります。重機のバケットの刃先を設計データに合わせて自動制御するため、オペレーターはコックピットのモニターを見て操作するだけで、設計どおりに地面を削ったり、土を盛ったりできます。
丁張り作業のために危険な斜面へ作業員を立たせる必要がなくなり、安全性は劇的に向上します。また、オペレーターの熟練度に依存しにくい施工を支援できるため、人手不足でも手戻りのない高速施工を実現します。測量、設計、施工を一貫したデジタルデータでつなぐことで、復旧工期を短縮できます。
インフラ種類別の災害復旧測量の活用例
災害の形態とインフラの種類によって、適した測量方法はそれぞれ異なります。最後に、道路・斜面、河川・堤防、橋梁・トンネルにおける具体的な活用方法を説明します。
道路・斜面崩落現場
道路・斜面崩落現場では、ドローンレーザーで斜面崩落の形状を把握できます。その結果から堆積土砂量を短時間で算出し、搬出に必要なダンプトラックの台数や人員、仮置き場の検討に活用します。
復旧作業中は、地上型レーザースキャナーで斜面の変位を定期的に計測し、作業員の安全を24時間体制でモニタリングすることも可能です。
河川氾濫・堤防決壊現場
河川氾濫・堤防決壊現場では、例えば水が引き始めた段階で、広域対応ドローンを使い、浸水エリア全体の地形データを一括取得します。決壊した堤防の破堤口の幅と深さを3Dで正確に捉え、緊急復旧に必要な投入量を設計できます。
さらに、河床がどれほど削られたかを把握し、本格的な護岸復旧へつなげることで、確実な復旧計画を作成できます。
橋梁・トンネル現場
橋梁・トンネル現場では、ミリ単位の厳密な判断が必要です。測量データを使えば、肉眼による接近調査が難しい橋脚や橋梁の下部構造を、高精度3Dレーザースキャナーやドローンカメラで遠隔・非接触計測できます。
地震前後の形状を比較して、橋脚の傾き、支承部のずれ、部材の変位などを数値化することにも役立ちます。微細なクラックは、近接撮影画像や目視点検、専用のひび割れ調査と組み合わせた評価が必要ですが、測量データによって早期評価が可能になります。
これらのデータをもとに、緊急車両を直ちに通行させてよいか、架け替えなどが必要かといった健全性診断を短時間で判断できます。
まとめ
激甚化する自然災害から地域社会の命綱であるインフラをいち早く確実に復旧するには、その成否を握るプロセスの起点となる測量のスピードと安全性、その後の復旧施工へつなぐデータの質が重要です。
ドローンや3Dレーザースキャナーを使う3Dインフラ測量は、危険区域への立ち入りや、図面化までに数週間を要するという従来測量の課題を解決する決定的な手段となります。現場全体をデジタル空間に再現する3D点群データにより、見落としのない被害分析が可能です。
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