災害時の現地調査では、被害状況を迅速かつ正確に把握し、避難経路の確保や復旧計画の立案につなげる必要があります。一方、二次災害の危険が残る現場では、人が立ち入る従来の調査方法に限界とリスクがあります。
今回は、災害時の現地調査・測量の基本手順、デジタル技術を活用した調査方法、安全性を確保するポイントを解説します。また、アジルジオデザインが提供する、高度な測量ソリューションや3D点群処理に対応した機器についても紹介します。
2026年7月に発生した熊本地震(令和8年熊本地震)をはじめ、全国各地で高まる防災・復旧ニーズに対応するための情報として、ぜひ参考にしてください。
▼この記事のポイント
- 災害時の現地調査は、概況把握、危険度評価、詳細測量の順に進めます。
- ドローンや3Dレーザースキャナーは、危険区域に立ち入らず広範囲を計測できます。
- 3D点群データは、土量計算や復旧設計、GISでの情報共有に活用できます。
- 平常時から3Dデータを蓄積すると、被災前後の差分を比較できます。
災害発生時における現地調査の基本プロセス
災害時の現地調査は、概況把握、危険度評価、詳細測量の順に進めることが基本です。まず、初動調査の目的と段階的な進め方を確認します。各段階で得た情報を次の判断と復旧計画へ確実につなげることが重要です。
ここでは、災害発生時における現地調査の基本的なプロセスについて解説します。
初動調査の速さが二次災害の防止と復旧計画を左右する
災害直後の初動調査で最も重要なのは、状況を迅速に把握して二次災害を未然に防ぐことです。
地震や豪雨で地盤が緩んでいると、わずかな余震や降雨でも、土砂崩れや家屋の倒壊といった連鎖的な被害が生じる危険性が極めて高くなります。被害の全容を早期に確認して危険区域を特定することは、地域住民だけでなく、救助隊や復旧作業員の命を守るための絶対条件です。
被害の規模と範囲を特定することは、その後の復旧計画を立案する基盤にもなります。道路の寸断箇所や機能不全に陥ったインフラを高精度なデータとして記録すれば、復旧に必要な人員、資材、重機を適切に配置できます。データの精度が低い場合は現場で手戻りが生じ、復興プロセス全体の遅れにつながりかねません。
行政への被害報告や被災者に対する罹災証明書の発行でも、客観的で正確な記録の保持が不可欠です。初動調査で得た位置情報や、被害状況を示す画像・測量データは、災害復旧事業の国庫補助申請など、公的手続きを円滑に進めるための重要なエビデンスとして機能します。
現地調査は概況把握・危険度評価・詳細測量の順で進める
災害現場の現地調査は、安全性と効率性を両立させるため、段階的に進めます。
第一段階:遠隔地や上空からの概況把握
第一段階は、遠隔地や上空からの概況把握です。人が立ち入る前に、航空機、ヘリコプター、ドローンなどで広域を撮影し、被害の全体像を俯瞰します。
これにより、インフラの寸断箇所や大規模な崩落現場などを、広い視点から速やかに把握できます。この段階では、危険箇所と優先的に確認すべき場所を見極めます。
第二段階:危険度の評価し・二次災害の防止策の立案
第二段階では、危険度を評価し、二次災害の防止策を立案します。概況調査のデータをもとに、地盤の亀裂や構造物の傾斜など、崩落・倒壊の兆候がないかを専門技術者が評価します。
その結果に基づいて立入禁止区域を設定し、調査や作業を安全に進めるための進入ルートを確定します。
第三段階:被害状況の詳細な測量・数値データ化
最終段階では、被害状況を詳細に測量し、数値データ化します。
安全を確保したエリア、または遠隔測量技術を使い、復旧設計に直接利用できるmm・cm単位の高精度な測量を実施します。3Dレーザースキャナーなどで現在の地形や構造物の変状を正確に数値化し、その後の土量計算やCAD設計につなげます。
作業員の安全確保にはリスクアセスメントが欠かせない
災害現場では、作業員の命を最優先し、危険性・有害性を特定、評価するリスクアセスメントを実施する必要があります。
現場には、二次崩落、余震、急な天候悪化など、予測しにくいリスクが常に潜んでいます。作業前に安全管理体制を構築して指揮系統を明確にし、緊急時の退避ルールと連絡手段を確立しておくことが欠かせません。
作業員の安全確保には、現場へ入る前の入念な情報収集も不可欠です。気象情報、過去の地形図、地質データ、初動時の空撮画像などを総合的に分析し、危険箇所を事前に洗い出します。作業時には、ヘルメットや安全帯などの基本装備に加え、ガス検知器や変位センサーを携帯・設置し、異常を即座に検知できる体制を整えます。
人的リスクを根本から低減するには、遠隔調査の活用が有効です。作業員が危険箇所へ近づかず、安全な場所から機器を操作してデータを取得すれば、安全確保と高精度なデータ収集という両方の課題に対応できます。
従来の災害現地調査方法とその課題
従来の現地調査は、作業員が直接現場へ入るため、安全性、調査範囲、作業時間に課題があります。ここでは、人の手による調査方法の特徴と、大規模災害時に生じる実務上の問題を整理します。広域災害ではアクセス遮断と人手不足が重なり、調査の初動が遅れやすくなります。
- 徒歩・目視による調査は安全確保と全体把握が難しい
- トータルステーションやGNSSは立入困難な現場で使いにくい
- 大規模災害ではアクセス遮断や人手不足が調査を妨げる
徒歩・目視による調査は安全確保と全体把握が難しい
徒歩・目視による調査では、作業員の安全を確保しながら被害の全体像を捉えることが困難です。
従来、災害直後の被害確認では、調査員が徒歩で現場へ入り、目視、写真撮影、スケッチなどを行う方法が主流でした。しかし、土砂崩れや建物倒壊の危険が残る不安定な地盤を歩く作業には、二次災害へ巻き込まれるリスクが常に伴います。
徒歩で移動できる距離には限界があるため、調査範囲も局所的になりがちです。被害が広範囲に及ぶ場合、全体像の把握までに膨大な時間がかかり、初動対応や復旧計画の策定が遅れる原因になります。
目視調査では、被害規模の捉え方が作業員の経験や主観に左右されます。土砂の崩落規模や建物の傾斜角度などの重要な指標が、調査員ごとに異なる基準で記録されると、データのばらつきや精度不足が復旧工事の設計段階で障壁となります。
トータルステーションやGNSSは立入困難な現場で使いにくい
トータルステーション(TS)やGNSS測量機は、正確な三次元座標を地点ごとに取得できる、測量分野の標準的な機器です。
平時の土木工事や境界測量では、高い信頼性を持つ測量機器として用いられています。地点ごとの正確な座標を得る用途では、現在も重要な役割を担います。
一方、災害現場という特殊な環境では、TSの強みを発揮できない場合があります。
TSを使うには、作業員が測量地点へ赴き、プリズム(反射鏡)を設置する必要があります。地割れや土砂崩れが起きた立入困難区域では、プリズムを設置できません。機器本体を据え付ける強固で水平な足場も確保しにくく、液状化した現場では十分な計測が困難です。
また、TSやGNSSは点ごとにデータを取得するため、広大な被災区域の地形を網羅的に測量するには、多数の測点を観測しなければなりません。その分、測量時間が増え、迅速性が求められる災害対応ではタイムロスが課題になります。
大規模災害ではアクセス遮断や人手不足が調査を妨げる
大規模災害では交通網が遮断され、調査地点へ到達すること自体が難しくなります。地震による道路の陥没、土砂崩れ、倒木などで、調査車両だけでなく徒歩でも現地へ近づけないケースが頻発します。到着までに数日かかる場合もあり、調査の初動を遅らせる要因になります。
同時に、人的リソースの不足にも直面します。広域災害では多数の現場で調査が同時に必要となり、測量技術者や行政の土木担当者が不足します。限られた人員で膨大な作業を担うと、長時間労働による疲労から、作業効率の低下、判断ミス、労働災害のリスク増加という悪循環に陥ります。
大規模な地すべりや山体崩壊など、広域かつ立体的な地形変状を伴う災害では、地上から見上げるだけでは被害のメカニズム、崩落の起点、影響範囲を正確に把握できません。複雑な被災メカニズムを捉えきれないことも、従来手法の限界です。
最新技術を活用した災害現地調査手法
危険区域を安全かつ効率的に調査するには、ドローン、3Dレーザースキャナー、点群データなどの活用が有効です。ここでは、それぞれの技術で把握できる情報と活用方法を解説します。複数の技術を組み合わせることで、概況把握から復旧設計用データの取得までを段階的に支えられます。
- ドローンの空撮・写真測量で広範囲を安全に把握できる
- 3Dレーザースキャナーで被害状況を立体的に計測できる
- ドローン搭載LiDARなら樹木下の地形も正確に捉えられる
ドローンの空撮・写真測量で広範囲を安全に把握できる
ドローンの空撮を使うと、地上からアクセスできない現場でも、上空から広域の状況を把握できます。
撮影した高精細な画像や動画をリアルタイムで対策本部へ伝送すれば、関係者が被害状況を共有し、速やかな意思決定につなげられます。地上の移動に左右されにくいため、道路が寸断された状況でも初動に必要な情報を集めやすくなります。
ドローンの大きなメリットは、立入禁止区域や崩落のおそれがある斜面へ作業員を向かわせず、遠隔撮影によって安全を確保できることです。二次災害のリスクを抑えながら、必要な現場情報を収集できます。
さらに、連続撮影した複数の写真をソフトウェアで解析する写真測量により、地形の3Dモデル、オルソ画像、数値表層モデル(DSM)を生成できます。広範囲の地形データを効率的に取得し、被災前後の変化を把握することが可能です。
3Dレーザースキャナーで被害状況を立体的に計測できる
復旧設計に精密な三次元データが必要な場面では、地上型や移動型の3Dレーザースキャナーが有効です。対象物へ毎秒数十万~数百万点のレーザー光を照射し、反射時間を計測することで、構造物や斜面の立体形状をmm単位からcm単位の高精度な点群データとして取得します。
3Dレーザースキャナーを使えば、写真測量で影になりやすい暗所、橋梁下部、トンネル内部、複雑に変形した構造物も立体的に可視化し、数値データとして記録できます。そのため、目視では見つけにくい微細なクラックや歪みも詳細に分析できます。入り組んだ形状を点の集合として保存し、後から複数の視点で確認することも可能です。
こうした高度な測量ニーズに対し、アジルジオデザインの高精度測量製品・ソリューションは、過酷な災害現場でも安定して稼働する堅牢性と、大量の点群データを迅速に処理・軽量化するソフトウェア連携を特長としています。これらの機器を活用することで、現場の計測時間を短縮し、安全で正確な現況把握につなげられます。
ドローン搭載LiDARなら樹木下の地形も正確に捉えられる
写真測量には、草木などの植生に覆われた地表面の形状を計測しにくいという弱点があります。この課題に対応するのが、ドローン搭載型のLiDARシステムです。
LiDARのレーザーパルスの一部は、葉や枝の隙間を通って地表面へ届くため、植生の影響を除いた地形を高精度に捉えられます。得られた地表面データは、斜面の断面図作成や崩落土砂の土量計算に展開でき、必要なダンプカーの台数など、具体的な復旧作業の計画に役立ちます。
さらに、国土地理院などが整備した平時の航空測量データと、災害直後に取得したLiDARデータを重ねて解析すれば、地形の変化量を定量的に把握できます。このデータは、地すべりの活動状況を評価し、今後の対策工法を検討するための基礎資料になります。
2026年7月の熊本地震における災害復旧と測量技術の活用
2026年7月に発生した令和8年熊本地震を例に、災害現場で求められる対応と、測量製品・技術の活用可能性を確認します。
2026年熊本地震では交通網の分断が現地調査を困難にした
2026年7月に熊本で発生した地震(令和8年熊本地震)では、マグニチュード7.1の地震により、宇城市・氷川町で最大震度7を観測する激しい揺れが広範囲を襲い、甚大な被害をもたらしました。
初動調査の大きな障壁となったのは、大規模な土砂崩落、道路の陥没、橋梁の損傷による交通網の分断です。主要高速道路の通行止めが相次ぎ、被災地中核部へのルートが限られたため、調査隊や救援物資の投入が物理的に困難になりました。
活発な余震が長期にわたって続いたことも、現地調査を難しくしました。山間部の地盤は極度に緩み、わずかな揺れや降雨でも新たな斜面崩壊が起きる危険性が極めて高いため、従来の徒歩調査を行うことは困難でした。
停電や断水などのライフライン途絶に加え、九州新幹線のレール破断や軌道変形など、広範囲のインフラ損傷も同時多発的に発生しました。限られた人員で、多岐にわたる被害を同時並行かつ迅速に調査するという、難易度の高い課題が現場に突きつけられました。
復旧現場では非接触・迅速・高精度な測量が求められる
このような被災環境で復旧を進めるには、非接触、迅速、高精度という3要件を同時に満たす測量技術が必要です。
非接触
第一の要件は、非接触・遠隔操作による安全確保です。
余震で二次崩落が起きる危険があるため、作業員を危険箇所へ立ち入らせてはなりません。ドローンや遠隔操作対応の地上型レーザースキャナーを使い、数百m離れた安全圏から精密なデータを取得できる体制の構築が急務です。
迅速
第二の要件は、早期のインフラ復旧に向けて、データ取得から解析までの時間を最小限にすることです。
現場で取得したデータを事務所へ持ち帰り、数日かけて解析するのではなく、現場のPCやクラウド処理を活用して数時間以内に数値化するスピードが求められます。
高精度
第三の要件は、復旧工事の計画に利用できる3Dデータの生成です。
概況を把握するだけでなく、取得した点群データをすぐに3D CADソフトへ取り込み、土留め壁の設計や土砂撤去量の算出など、実際の土木工事へつなげることが復旧を加速させます。
アジルジオデザインの機器が安全な調査と迅速な復旧を支える
熊本地震のような災害現場では、アジルジオデザインの機器を安全な調査と迅速な復旧に活用できます。
当社の製品は、悪路や足場の悪い立入困難現場でも運搬・設置しやすいよう、軽量で機動性の高い設計が施されています。交通網が分断され、徒歩で搬入する被災地でも、測量機器を迅速に投入して高精度な計測を開始できます。
取得した点群データは、専用ソフトウェアで迅速に処理・軽量化できるため、発災直後の概況把握から復旧設計用の詳細データ作成まで一貫して活用できます。非接触・遠隔計測に対応した機器を組み合わせれば、作業員を危険区域へ立ち入らせず、復旧に必要な高精度データを安全に取得できます。
現地調査データを迅速な復旧・復興につなげる活用方法
現地で取得した調査・測量データは、復旧設計、被害情報の共有、将来の防災に活用できます。ここでは、復旧工事や意思決定へつなげる具体的な方法を解説します。データを目的に応じたシステムへ連携し、関係者が使える形に整えることが重要です。
点群データとBIM/CIMの連携で復旧設計を迅速化できる
高密度な3D点群データをBIM/CIM(3次元モデルを活用した建設生産・管理システム)と連携させると、復旧設計を迅速化できます。現況と設計を同じ三次元空間で扱えるため、検討と情報共有を進めやすくなります。
例えば、崩落した道路や斜面の点群データをCADソフトへ読み込めば、現在の地形をPC上で正確に再現できます。そこへ設計データを重ねることで、必要な擁壁のサイズや配置を速やかにシミュレーションし、3Dモデルを作成できます。
土砂災害現場では、崩落前後の地形データを解析して、撤去する土量を迅速かつ高精度に算出することも可能です。その結果、重機の手配や残土処分の計画が進めやすくなり、視覚的なデータ共有によって自治体や発注者の承認、意思決定も迅速化します。
GISによる被害情報の可視化で関係者間の共有が進む
広域災害では、取得したデータを関係者間で正確に共有し、活用することが重要です。
その手段として役立つのがGIS(地理情報システム)です。ドローンやスキャナーによる点群データ、オルソ画像、各種調査報告を正確な位置情報と結び付け、GISのデジタル地図へ統合すれば、被害状況を面的に一元管理・可視化できます。
GISは、時間の経過に伴う変化の管理にも適しています。定期的なドローン測量の結果をGISへ蓄積すれば、応急処置後の斜面の微細な動きや、復旧工事中の地盤沈下・構造物変位を継続的に監視でき、二次災害の予防に役立ちます。同じ位置のデータを時系列で比較できることが、継続監視の基盤になります。
デジタルツインの蓄積が将来の防災・減災に役立つ
現実の環境をデジタル空間上に再現するデジタルツインは、災害復旧だけでなく、将来の防災・減災にも活用できます。自治体やインフラ管理者が平時からドローンやMMS(モービルマッピングシステム)で道路、橋梁、斜面の高精度な3D測量データを蓄積しておけば、災害直後のデータと速やかに比較・分析できます。
データを解析することで、崩れやすい地形や、地震の揺れに弱い構造物などの詳細なメカニズムを把握できます。さらに、これらの知見をAIなどで分析すれば、災害リスク予測モデルを高度化し、より精度の高いハザードマップへ更新できます。
インフラの老朽化が進む日本では、災害対応のデジタル化が欠かせません。点群データや3Dモデルによるデジタルツインは、災害復旧の迅速化と平時のインフラ維持管理の効率化を支え、強靱な国土づくりの重要な基盤になります。
まとめ
災害時の現地調査は、復旧へ向けた第一歩です。調査では、作業員の安全を確保しながら、被害状況を迅速かつ正確に把握する必要があります。いずれかが欠けると、二次災害のリスクが高まり、復興までの道のりも遅れかねません。
従来の人手による調査方法には多くの限界がありました。一方、2026年熊本地震をはじめとする近年の大規模災害では、ドローン、3Dレーザースキャナー、LiDARなどを使った非接触・広範囲の測量手法が大きな効果を発揮しています。
こうした技術により、作業員の命を守りながら、復旧設計に直結する高精度な3Dデータを取得できます。
アジルジオデザインは、災害現場のニーズに応える先進的な測量機器と3Dデータソリューションを提供し、安全な現地調査と迅速な復旧・復興を支援します。災害対応や測量機器の導入については、アジルジオデザインまでご相談ください。




