近年、建設現場や土木工事、インフラ点検、文化財保存などの分野で、従来の測量手法では実現できなかった効率化や高精度データのニーズが急速に高まっています。こうした背景の中で注目されているのが、ハンディ型3Dスキャナーです。特に当社アジルジオデザインの「X200GO SLAMマルチプラットフォームレーザースキャナー」は、軽量で持ち運びやすく、高精度な点群データ取得とリアルタイムでのカラーリングが可能な最新モデルとして、多くの現場で導入が進んでいます。

今回は、ハンディ3Dスキャナーの基本原理やX200GO SLAMマルチプラットフォームレーザースキャナーの技術的特長、現場での活用事例、導入メリット、今後の展望まで幅広く解説します。未知の環境でも正確に3Dデータを取得し、業務の効率化やDX推進に直結する技術の全貌を知ることで、現場での導入検討や業務改善のヒントが得られるでしょう。

ハンディ3Dスキャナーの概要

まずは、ハンディ3Dスキャナーの基本原理について解説します。

ハンディ3Dスキャナーとは

ハンディ3Dスキャナーとは、レーザーやLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いて対象物や現場の形状を3次元データとして取得する装置です。従来の固定型スキャナーが「据え置いて計測する」方式であったのに対し、ハンディ型は「手持ちで移動しながらスキャンできる」ことが最大の特長です。

作業者が現場を歩くだけで、周囲の空間をリアルタイムに点群データ化できるため、特に次のような環境で威力を発揮します。

  • 狭小空間(配管設備、トンネル内部など)
  • 複雑な地形(法面、斜面、岩場など)
  • 高所・危険箇所の遠隔計測

従来は数時間を要した現場計測を数十分で完了できるケースもあり、現場の生産性向上に直結します。

また、ハンディ型の多くはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を採用しており、GPSが届かない場所でも自律的に位置情報を補正できます。これにより、屋内や地下でも正確な3Dマッピングが可能になりました。

X200GO SLAMマルチプラットフォームレーザースキャナーの特長

「X200GO SLAM」は、ハンディ型スキャナーの中でも最新鋭の機能を搭載したプロフェッショナルモデルです。次の5つの技術的特徴が、他社製品との差別化ポイントとなっています。

  1. マルチプラットフォーム対応
  2. 最大300mの計測範囲とミリ単位の高精度
  3. 360度パノラマ画像統合
  4. リアルタイム点群カラーリング
  5. スマートアプリ「GOapp」での現場管理

1.マルチプラットフォーム対応

X200GOは、手持ち・ドローン搭載・車載・地上型の4モードに対応しています。現場の環境や作業目的に応じて柔軟に使い分けができるため、1台で多様な用途をカバーできます。

2.最大300mの計測範囲とミリ単位の高精度

一般的なハンディ型の計測範囲が100m前後なのに対し、X200GOは最長300mを実現します。そして、高精度LiDARユニットにより、±10mmクラスの精度で点群データを取得可能です。

3.360度パノラマ画像統合

撮影した360度パノラマ画像を点群データに統合できるため、視覚的にもわかりやすい3Dモデルを生成可能です。設計・施工・報告書作成などでの視認性が格段に向上します。

4.リアルタイム点群カラーリング

計測と同時にカラー情報を反映するため、現場で即座に「どこまでスキャンできたか」を確認できます。再測量の手間を大幅に削減できることが強みです。

5.スマートアプリ「GOapp」での現場管理

Android/iOS対応アプリにより、計測データの確認・整理・共有が現場で完結します。従来のようにPCへの転送を待つ必要がなく、その場で判断・修正・報告が可能です。

ハンディ3Dスキャナーが現場で活用される主な理由

ハンディ3Dスキャナーは、現場での測量作業に革命をもたらし、多くのメリットを提供します。特にその活用が進んでいる理由として、主に次の3つが挙げられます。ここでは、それぞれの特徴が、どのように現場業務を効率化するのか解説します。

  • 狭小空間や複雑地形でも正確に計測可能だから
  • リアルタイムで点群データを確認できるから
  • 複数のデータ活用が可能だから

狭小空間や複雑地形でも正確に計測可能だから

従来のトータルステーションや固定型スキャナーでは、計測位置を変更しながら設置を繰り返す必要があり、特に狭い空間では計測が難しいという課題がありました。一方、ハンディ3Dスキャナーは、人が通れる場所であればほぼどこでもスキャン可能です。

この特長により、狭小空間や複雑な地形でも、迅速かつ正確なデータ取得が可能になります。特に、トンネル内部や建物内部、橋梁の桁下、プラント設備などの入り組んだ構造物でも、オペレーターが歩きながらスキャンを行うことで、自動的に点群データを生成できます。

これにより、現場作業の自由度が大きく向上し、従来の方法では不可能だった場所でも計測を実現できます。

リアルタイムで点群データを確認できるから

ハンディ3Dスキャナーは、現場で取得したデータを即座に可視化することができ、再測量のリスクを大幅に削減します。

X200GO SLAM」は、取得した点群データをリアルタイムでカラー化し、タブレット上でその場で確認することができます。これにより、計測漏れや誤測定を即座に発見し、追加のスキャンをその場で行うことができます。

この機能は現場での迅速な意思決定をサポートし、再作業や現場に戻る手間を削減します。結果として、作業効率が最大化され、コストの削減にもつながります。

複数のデータ活用が可能だから

ハンディ3Dスキャナーで取得した高精度な点群データは、BIM/CIMモデルやGIS、クラウド解析システムといった他のシステムと連携して活用できます。このデータは、設計から施工、維持管理までの全工程で利用することが可能です。

たとえば、BIM/CIMとの連携により、現況モデルと設計図との照合が可能になり、施工中の差異をリアルタイムで確認できます。また、施工管理においては、出来形管理や施工進捗の可視化が可能です。

インフラの維持管理では、点群データをもとにインフラの変状をモニタリングしたり、経年劣化の比較を行ったりすることができます。さらに、文化財保存分野では、取得した3Dデータをデジタルアーカイブ化し、保存や修復の基礎資料として活用することができます。

つまり、ハンディ3Dスキャナーは単なる計測機器にとどまらず、データ活用を通じて現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な起点となるのです。

ハンディ3Dスキャナーの現場での活用事例

ハンディ3Dスキャナーは、建設や土木、インフラ点検、文化財保存などさまざまな分野で活用されています。ここでは、これらの分野での具体的な活用事例を紹介し、どのように現場作業が効率化され、精度が向上しているのか解説します。

  • 建築・リフォーム現場
  • 土木・道路工事
  • インフラ・維持管理
  • 文化財・遺跡保存

建築・リフォーム現場

建築やリフォーム現場では、現況調査から施工管理まで、ハンディ3Dスキャナーが広く活用されています。

特に、図面が存在しない古民家や歴史的建造物の調査において、その重要性が増しています。これらの建物では、現況を3Dスキャンすることで、設計図のデジタル化が容易に行えます。

X200GO SLAM」は、屋内を歩きながらスキャンできるため、短時間で建物全体の3Dモデルを取得することが可能です。このデータは、施工前後の比較やリフォーム提案資料としても活用され、設計や施工の精度向上に寄与しています。

土木・道路工事

土木や道路工事では、従来の測量機器を複数人で運用し、一定の間隔で設置と再測定を繰り返していました。これにより、人的コストや時間が大きな負担となっていました。

しかし、ハンディ3Dスキャナーの導入により、作業員は歩きながら周囲をスキャンするだけで、現場全体の高密度な点群データを迅速に取得できます。

たとえば、トンネル内の出来形確認や法面の傾斜測定、道路の縦断・横断計測など、従来数日かかっていた作業が数時間で完了するようになりました。また、取得したデータは専用ソフトウェアで断面図や縦断図、出来形比較図に自動変換され、測量からデータ整理までのワークフローを効率化します。さらに、BIM/CIMモデルやクラウドシステムと連携することで、発注者・設計者・施工者が同じデータを共有し、進捗確認や出来形評価がスムーズに行えるようになります。

これにより、工事全体の透明性が向上し、品質保証や説明責任を確実に果たすことができます。

インフラ・維持管理

橋梁や鉄道、ダムなどのインフラ点検では、ハンディ3Dスキャナーが特に効果を発揮します。高所や危険箇所の作業時間を最小限に抑え、作業員の安全を確保することができます。

たとえば、点群データを基にひび割れや変位を3Dで可視化でき、補修計画の立案や経年変化のモニタリングに役立ちます。

X200GO SLAM」は現場で即時にデータ確認ができるため、測り漏れやデータ欠損を防止し、後工程の品質向上にも貢献します。このリアルタイム確認機能は、インフラ点検における作業効率を劇的に向上させます。

文化財・遺跡保存

文化財や遺跡の保存においては、「非接触で正確に記録できる」ことが極めて重要です。ハンディ3Dスキャナーは、遺構や彫刻、仏像などの繊細な対象物を傷つけることなく、ミリ単位で精密に再現することができます。

取得したデータはデジタルアーカイブとして保存され、修復作業や展示、研究資料として活用することができます。特に、「X200GO SLAM」のカラーリング機能により、対象物の原形や質感を忠実に再現できるため、文化財の保存において非常に高く評価されています。

このように、ハンディ3Dスキャナーは、文化財の未来に向けた保存・再現において重要な役割を果たしています。

ハンディ3Dスキャナーを導入するメリット

ハンディ3Dスキャナーの導入には、作業効率の向上、精度の向上、安全性の強化、そして現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)への貢献といった大きなメリットがあります。ここでは、これらのメリットが現場作業にどのように役立つのか解説します。

  • 作業効率と精度を向上できる
  • 安全性を向上できる
  • データ活用で現場DXに貢献できる

作業効率と精度を向上できる

従来の測量では、定点スキャナーを複数箇所に設置し、位置合わせを行いながらデータを取得していました。このプロセスには時間がかかり、作業全体がボトルネックとなることが多く、1現場で数時間から1日を要することもあります。

しかし、ハンディ3Dスキャナーは、この手間を大幅に削減します。オペレーターがスキャナーを持って歩くだけで、自己位置を自動的に推定しながらリアルタイムで周囲の3D形状をマッピングできます。この技術により、測量の効率が劇的に改善され、作業者は現場を移動しながらスキャンを進めることができます。

さらに、最新の「X200GO SLAM」では、高密度LiDARセンサーにより、数百万点/秒の高精度スキャンを実現し、リアルタイムで誤差を補正します。これにより、従来複数人で行っていた測量作業を1人で短時間で完結できるようになり、限られた人員で多くの現場をカバーできるようになります。

ハンディ3Dスキャナーは「短時間で終わる」だけでなく、「正確なデータを即座に使用できる」という二重のメリットを提供します。

安全性を向上できる

従来の測量では、危険な環境での作業が避けられませんでした。たとえば、崩落リスクがある斜面や高所での足場点検、狭小空間や老朽化したトンネルでの作業は、作業員に大きなリスクを伴いました。

しかし、ハンディ3Dスキャナーを使用すれば、危険な場所に立ち入らずに現況データを取得することができます。遠隔でスキャンするだけで、周囲の地形や構造物、壁面などの3Dデータを取得できるため、危険箇所での作業を最小限に抑えることが可能です。

特に、SLAM技術を用いたスキャナーは、GPSが届かないトンネル内や地下でも、スキャナー自身が周囲の形状から自己位置を計算し、正確にデータを取得します。この技術により、屋内や地下、夜間といった従来測量が困難だった環境でも、安全に作業を進めることができます。

実際にトンネルの補修現場では、作業員がスキャナーを持って通過するだけで内壁のひび割れや変形が可視化でき、現場の安全性が大きく向上しました。また、法面点検やダム、護岸の測量でも、従来は重機やロープを使用して近接測定していたものが、スキャンにより遠隔で短時間に完了できるようになりました。

これにより、作業員の危険区域立ち入りが減り、労働災害リスクの低減とともに、現場全体の安全マネジメントが向上しています。

データ活用で現場DXに貢献できる

ハンディ3Dスキャナーで取得したデータは、BIM/CIM、クラウドシステム、AI解析ツールなどと連携し、現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する基盤となります。取得した点群データは、施工管理や維持管理、資産管理など、現場業務のあらゆる場面で活用できます。

たとえば、施工現場では、出来形の確認や構造物の変位比較、AIによる異常検知などが可能となり、現場作業だけでなく、管理・解析・判断が一元化されます。インフラの維持管理では、スキャンデータを基準データと比較することで、劣化や沈下、ひび割れの変化を自動的に検出できるようになります。このように、AI解析を組み合わせることで、「人の目による確認」から「データによる判断」へとシフトしています。

さらに、3DスキャンデータをBIM/CIMモデルに統合することで、現場のリアルな状態と設計データとの差異をリアルタイムで確認でき、手戻りやミスの発生を未然に防ぐことができます。このデータの一元化は、業務全体の効率化だけでなく、情報の透明性向上にも貢献します。

結果として、計測から解析、報告までのワンストップ化、現場・設計・発注者間の円滑な情報共有、データを基にした迅速な経営判断が実現します。また、将来的には、これらのデータがAIによって自動的に解析され、施工品質の自動判定や異常検知、構造物の予防保全など、より高度な活用が期待されています。

ハンディ3Dスキャナーの今後の展望

ハンディ3Dスキャナーは、技術の進化とともにますます高機能化し、さまざまな分野での活用が広がっています。最後に、今後どのような技術革新が期待され、どのように社会に浸透していくのかについて解説します。

  • 技術進化による自動化・効率化の加速
  • クラウド・通信技術との連携
  • 社会基盤としての浸透

技術進化による自動化・効率化の加速

従来のSLAM技術は、手ブレや反射によって誤差が生じることがありました。しかし、AI技術の導入により、センサーはノイズを学習し、自動的に補正することが可能になっています。

たとえば、X200GO SLAM」では、LiDARセンサーの高密度スキャンと深層学習を組み合わせることで、広範囲かつ高精度なスキャンを実現しています。これにより、従来のスキャンプロセス「スキャン→整合→モデリング→活用」といった複雑な手順が簡素化され、今後は現場でスキャンするだけでリアルタイムにBIMモデルへ反映されるようになるでしょう。

これにより、現場での作業がさらに効率化され、「撮るだけで3Dモデル化」が現実となります。技術の進化により、スキャンの精度と効率は飛躍的に向上することが期待されています。

クラウド・通信技術との連携

5G/6G通信の普及により、現場で取得した3Dデータは即座にクラウドにアップロードされ、離れた拠点とのリアルタイムな共同作業が可能になります。これにより、複数の作業員が同時にスキャナーを使用し、現場全体を「協調スキャン」する仕組みが実現しつつあります。

従来は、スキャンしたデータをPCに取り込んでローカルで処理する必要がありましたが、今後はスキャンと同時にクラウドにデータをアップロードし、リアルタイムでデータの確認や指示が行えるようになります。

たとえば、現場担当者がスキャンしたデータを離れた技術者が即座に確認し、追加の指示を出すことが可能になります。これにより、再測定の手間や出張のコストを大幅に削減でき、作業効率が向上します。

また、複数のスキャナーを連携させることにより、大規模な現場や複雑な構造物でも効果的なスキャンが行えるようになります。将来的には、工事現場全体がデジタルツインとして再現され、よりスムーズな作業管理が実現するでしょう。

社会基盤としての浸透

今後、ハンディ3Dスキャナーは、建設や土木、インフラ点検の現場で「標準装備」として定着することが予測されています。

測量や点検の手法は、もはや一部の専門技術ではなく、社会インフラの維持に欠かせないデジタル技術として広く浸透していくと考えられます。特に、災害対応や教育訓練などの分野で、3Dスキャナーはその価値を発揮します。

たとえば、被災地の現場をスキャンし3Dモデル化することで、復旧計画の立案時間を大幅に短縮できます。また、現場データを基にVRシミュレーションを作成し、安全教育に活用することができ、より実践的な教育が可能になります。

従来の三脚型スキャナーや航空LiDARと比較して、ハンディタイプは軽量で持ち運びが容易であるため、「誰でも、どこでも、すぐにスキャンできる」ことが強みです。この機動力が、デジタルインフラの普及において重要な役割を果たし、社会基盤としての浸透を加速させると期待されます。

まとめ

ハンディ3Dスキャナーは、建設・土木・インフラ点検・文化財保存といった多様な分野において、作業効率と精度の両方を向上させる革新的なツールです。特に、当社アジルジオデザインが取り扱う「X200GO SLAMマルチプラットフォームレーザースキャナー」は、マルチプラットフォーム対応やリアルタイムでの点群カラーリング、360度パノラマ統合といった最先端技術を備えており、現場のさまざまな課題に対応する能力を有しています。

このツールの導入により、再作業の削減や施工精度の向上が実現し、安全性の向上やデータ活用による現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)も可能になります。さらに、当社は導入から運用、サポートまで一貫した体制を提供しており、各現場に最適なソリューションを提案することができます。

ハンディ3Dスキャナーの活用により、より精密で効率的、そして安全な未来の現場運用が実現し、業務のさらなる効率化と品質向上が期待されます。

当社アジルジオデザインでは、測量・土木・ロボティクス・GIS分野における最新技術の導入をサポートしており、VRSやGNSSなど多様な計測ソリューションに対応しています。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた包括的な提案を通じて、現場の課題を解決し、最適な作業環境の提供をお手伝いします。測量や位置情報技術に関するご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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