日本の国土の約3分の2を占める森林。その持続可能な管理は、資源利用のみならず防災や脱炭素社会の実現において極めて重要です。しかし、広大かつ険しい地形での毎木調査などは、多大な労力と時間を要する課題となってきました。

この状況を打破するために注目されているのが、光を用いたリモートセンシング技術「LiDAR」です。今回は、LiDARが森林管理にどのような革新をもたらすのか、その仕組みから最新のスマート林業への活用例までを解説します。

なお、当社アジルジオデザインでは、このLiDAR技術を駆使し、単なる測量データの提供に留まらない、森林経営のDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援方法について、情報をご提供しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にアジルジオデザインへお問い合わせください。

森林計測におけるLiDARの基礎知識

森林計測においてLiDARは、従来手法では把握できなかった地形と樹木構造を同時に可視化できる中核技術です。ここでは、森林調査のDXを支えるLiDARの基本原理と、森林分野との親和性について解説します。

LiDARの基本原理

LiDARは、レーザーの往復時間を計測することで、対象物までの距離と三次元形状を高精度に取得できるリモートセンシング技術です。不可視のレーザー光を照射し、その反射波が戻るまでの時間差を解析することで、対象物の位置をcm単位で特定します。

最大の特長は、1秒間に数万〜数十万発という高密度のレーザーパルスを連続照射できる点です。これにより、対象物の形状を無数の点として取得し、三次元の点群データとして高解像度に再現できます。

森林計測において特に重要なのが「マルチリターン機能」です。写真測量では樹冠に遮られた地表面を把握できませんが、LiDARのレーザーは葉の隙間を通過し、複数回反射します。

1発のパルスが樹冠で反射し、さらに枝葉を通過して地面に到達し、そのそれぞれの反射を個別に受信します。この仕組みにより、密林下であっても「樹高」と「地表面形状」を同時に取得できます。

アジルジオデザインでは、このマルチリターン特性を活用し、森林内部の垂直構造と真の地形を高精度に可視化しています。

森林管理で得られる3D点群データ

LiDAR計測で取得されるのは、XYZ座標と反射強度を持つ膨大な3D点群データです。この点群は単なる位置情報ではなく、森林のデジタルツインを構築する基盤データとなります。

点群を解析することで、現実の森林空間をコンピュータ上に高精度で再現できます。現地に立ち入らずとも、モニター上で林内構造を詳細に確認できるため、調査効率が飛躍的に向上します。

たとえば、点群を縦断方向に切り出すことで断面図を作成でき、樹冠厚、枝張り、下層植生の密度を視覚的かつ定量的に評価できます。これにより、「林内の混み具合」や「間伐の適否」といった従来は経験に依存していた判断を、客観的データに基づいて行うことが可能になります。

森林計測に用いられるLiDAR技術

森林計測では、目的や対象範囲に応じて搭載プラットフォームを選定することが重要です。主な手法は次のとおりです。

有人機(航空レーザ)

広域森林を効率的に把握する場合は、有人機による航空レーザが有効です。ヘリコプターや固定翼機に高性能センサを搭載し、広範囲を一括でスキャンします。

市町村単位や国有林など、数千ha規模の資源量把握や高精度地形図作成において、調査期間を大幅に短縮できます。

ドローンレーザー(UAV)

より高密度・高解像度なデータ取得には、ドローンレーザーが適しています。低空かつ低速で飛行できるため、点群密度を高めた精密計測が可能です。

伐採予定地や数ha規模の私有林、精度の高い毎木調査が求められるエリアにおいて、機動力を活かした効率的な運用が実現します。

地上レーザ(TLS/MMS)

個体木レベルの詳細計測には地上レーザが有効です。三脚固定型(TLS)や背負い式・手持ち式のモバイル型(MMS)があります。

これらは上空計測では取得が難しい胸高直径や幹形状、曲がりなどを直接スキャンできるため、木材品質評価や精密な資源量算定において高い効果を発揮します。

LiDARの導入メリット

LiDARの導入は、森林調査の効率・精度・安全性を同時に向上させる点に最大の価値があります。従来の歩測中心のアナログ調査と比較すると、調査手法そのものをデジタル基盤へ転換できるため、経済性と環境性を両立する森林経営の実現に直結します。

ここでは、LiDARを導入するメリットを解説します。

  • 調査コストの削減と安全性の向上につながる
  • 森林資源の計測精度が高い
  • 地形情報の可視化による路網設計の効率化につながる

調査コストの削減と安全性の向上につながる

LiDARは、現地踏査に依存していた森林調査の負担を大幅に軽減します。

従来は、急峻な斜面や深い藪の中を調査員がコンパスや輪尺を用いて歩測する必要があり、時間と労力を要する作業でした。しかし、ドローンや航空機によるスキャンを活用すれば、数週間かかっていた広域調査を数日で完了させることが可能です。

これにより、人件費の削減だけでなく、滑落事故、害獣被害、ダニ、熱中症といった現場特有のリスクを最小限に抑えられます。

さらに、LiDARは計測結果を数値データとして保存するため、再現性に優れています。目視や手計測では個人差や体調による誤差が避けられませんが、デジタルデータであれば、数年後の再計測時にも同一基準で比較できます。

これにより、成長量をcm単位で正確に把握し、継続的なモニタリング体制を構築できます。

森林資源の計測精度が高い

LiDARは、森林資源量を高精度かつ網羅的に把握できる点で優れています。木材経営において重要なのは、「どこに、どの径級の木が、何本あるか」という材積情報の精度です。

LiDARにより各立木の樹高を高精度に算出し、樹種別の材積式と組み合わせることで、山林全体の総材積を高い信頼性で推定できます。従来のサンプル調査による推計と比較すると、空間的なばらつきを含めた解析が可能となり、推定誤差を大幅に低減できます。

また、毎木レベルでの自動抽出が可能になることで、事実上の「全数調査」を実現できます。その結果、在庫管理の精緻化、伐採計画の最適化、将来収益のシミュレーション精度向上につながり、経営判断の確度が高まります。

地形情報の可視化による路網設計の効率化につながる

LiDARは、路網設計の高度化にも大きく貢献します。林業における作業道・林道は生産性を左右する基盤インフラですが、従来は樹木に遮られて地表面の詳細な起伏を把握することが困難でした。

LiDARでは、植生を除去したDTM(数値標高モデル)を生成できるため、崩壊跡地、小規模な尾根や谷、微細な段差といった微地形を明瞭に抽出できます。これにより、勾配を抑えた最適ルートの選定が可能となり、施工コストと維持管理リスクを同時に低減できます。

さらに、切土量・盛土量を事前に自動算出できるため、設計段階での数量把握が正確になり、工事計画の透明性と効率が向上します。結果として、防災性と経済性を両立した路網整備を実現できます。

LiDARデータを用いた解析プロセスとアウトプット

LiDARの真価は、取得した膨大な点群データを、森林経営に直結する実用的な情報へと変換できる点にあります。ここでは、計測データがどのような工程を経て価値あるアウトプットへと昇華されるのか、その具体的なプロセスを解説します。

点群データのフィルタリングとノイズ除去

解析の出発点は、不要データを除去し、信頼性の高い点群へと整形することです。

航空レーザーやドローンレーザーでは、1秒間に数十万発のパルスを照射するため、取得データは極めて膨大になりますが、その中には森林管理に直接関係しない情報も含まれます。たとえば、鳥や虫、空中の塵や霧は空中ノイズとして記録されます。

また、送電線や建物などの人工物も解析精度を低下させる要因となります。まずは専用ソフトウェアを用い、統計的処理によって孤立点や異常値を除去するクリーニング処理を実施します。

続いて実施するのが、解析精度を左右する「グラウンドフィルタリング」です。マルチリターンデータを基に、AIアルゴリズムや物理モデルを用いて、植生反射(オフグラウンド)と地表反射(グラウンド)を厳密に分離します。これにより、樹木をデジタル上で取り除き、地表面のみを抽出できます。

この工程を経て生成されるのが、数値標高モデル(DTM)です。DTMは、等高線図では把握できない微地形を高精度に可視化し、路網設計の基礎資料となるだけでなく、土砂災害リスク評価や砂防設計、大規模土木工事の現況測量図としても高い実用価値を持ちます。

パラメータの自動解析

フィルタリング後の点群は、立木情報の自動抽出へと進みます。LiDARデータを活用すれば、広範囲の森林においても、一本単位で樹木を識別することが可能です。

中心となるのは樹冠検知アルゴリズムです。樹冠の最高点を特定し、その周囲の形状から個体木を抽出します。抽出された樹冠位置とDEMとの差分を算出することで、各立木の樹高をcm精度で自動算出できます。

さらに近年は、深層学習を用いた樹種判別が実用段階に入っています。樹冠形状やレーザー反射強度(インテンシティ)の特徴量をAIに学習させることで、スギ・ヒノキ・マツなどの針葉樹と広葉樹を高精度に分類できます。目視判読に比べて高速かつ客観的な判別が可能です。

これらの解析結果は、次のような形で「毎木リスト」として整理されます。

  • 樹種
  • 樹高
  • 立木本数
  • 樹冠面積から推定される胸高直径

従来、野帳記録と手集計に依存していた作業は自動化され、事務負担は大幅に軽減されます。

森林資源台帳及びGISとの連携

解析結果は最終的にGISへ統合され、森林管理の中核データ基盤となります。点群、地形、個体木情報を重ね合わせることで、空間的に整合した森林情報が構築されます。

GIS上では、任意の区画をクリックするだけで、次のものなどを即時に確認できます。

  • 平均樹高
  • 立木本数
  • 蓄積材積
  • 過年度比較による成長量
  • 推定炭素吸収量

これは森林の状態をリアルタイムで把握できる「デジタル健康診断」といえます。

さらに、森林経営計画や補助金申請に必要な数値・図面も、GISと連携することで自動生成が可能です。必要データを抽出して帳票へ反映できるため、事務コストが削減され、担当者は戦略的な経営判断に集中できます。

加えて、クラウド上でダッシュボード化すれば、現場作業員、管理者、行政、投資家といった関係者間で情報共有が容易になります。3Dマップやグラフによる可視化は合意形成を円滑にし、迅速かつ精度の高い森林経営を実現します。

LiDARの活用例

LiDARは、取得した三次元データを経営判断や環境価値の創出へ直結させられる点に強みがあります。ここでは、森林資源管理・脱炭素・流通最適化の観点から、具体的な活用事例を整理します。

J-クレジット制度におけるMRVの高度化

LiDARは、J-クレジット制度におけるMRV(モニタリング・報告・検証)の効率化と信頼性向上に大きく貢献します。

カーボンニュートラルの実現を目指す中で、森林のCO2吸収量を正確に算定することは不可欠ですが、従来のMRVは人手によるプロット調査が前提でした。広大な森林に立ち入り、胸高直径や樹高を一本ずつ実測する方法は、時間と人件費を大きく要します。特に小規模所有者にとっては、調査費用がクレジット売却益を上回る「コスト倒れ」が課題でした。

LiDARを活用すれば、航空機やドローンにより広域の森林バイオマスを短期間で網羅的に取得できます。樹冠の高さ、広がり、密度といったデータを基に解析することで、森林全体の炭素蓄積量および年間吸収量を科学的かつ客観的に算定できます。

デジタルデータに基づく透明性の高い算定は、第三者検証を円滑にし、クレジットの信頼性を高めます。その結果、ESG投資を志向する企業からの資金流入が促進され、森林整備への資金循環を生み出す基盤となります。

生物多様性の可視化と環境評価への活用

LiDARは、生物多様性の定量評価にも有効です。ネイチャーポジティブやTNFDの枠組みが広がる中、森林の価値は炭素吸収だけでなく、生態系の質そのものへと拡張しています。

従来、生物多様性は定性的な評価にとどまりがちでしたが、LiDARの三次元構造解析により、森林の多層構造を客観的に把握できます。高木層、亜高木層、低木層、草本層までの垂直分布を可視化できるため、生態系の複雑性を数値化できます。

たとえば、次のような指標を点群から抽出し、定量評価することが可能です。

  • 野鳥の繁殖に必要な樹冠構造の複雑度
  • 希少昆虫の生息に関連する立ち枯れ木の分布
  • 林内光環境に影響する樹冠密度

これにより、森林のハビタットとしての質を科学的に示せます。

この客観データは、経済林と保全林のゾーニング高度化にも活用できます。木材生産を優先する区域と、生物多様性保全を重視する区域を明確に区分することで、環境価値と経済活動の両立を図れます。

また、企業の森づくり支援においても、成果を「生態系回復量」として示すことができ、社会的評価の向上につながります。

木材流通の最適化

LiDARは、木材流通における情報の非対称性を解消します。

従来は、需要側の具体的な発注に対して、実際に伐採するまで供給量を正確に把握できないという不確実性が存在していました。森林全域をレーザースキャンし、立木ごとにデジタル管理することで、伐採前から在庫状況を把握できます。

PC上で、どの区画にどの径級の樹木が何本存在するかを確認できるため、計画的な供給が可能になります。この在庫の可視化により、次のような効果が期待できます。

  • 需要に応じたジャストインタイムの伐採計画
  • 不要径級の過剰伐採防止
  • 運搬車両の積載計画最適化
  • 輸送コストとCO2排出量の削減

さらに、成長モデルと連動させることで、10年後・20年後の収穫可能量をシミュレーションできます。これにより、長期的な投資判断や経営計画の精度が高まり、林業は経験依存型の採集産業から、データに基づく計画型産業へと進化します。

LiDARは、スマート林業を実現する中核技術といえます。

LiDAR導入時のポイント

LiDAR導入を成功させるためには、目的の明確化、適切な手法選定、そして解析体制の構築が不可欠です。単に機器を導入するだけでは成果は得られず、経営や行政判断にどう活用するかまで見据えた設計が重要になります。最後に、LiDARを導入する際のポイントを解説します。

目的に応じた計測手法の選定

最適な成果を得るためには、目的に応じた計測手法を選ぶことが前提となります。常に最高精度のレーザーを用いれば良いわけではなく、コストと精度のバランスを踏まえた判断が必要です。

たとえば次のように、用途に応じた使い分けが求められます。

  • 広域地形の把握や防災計画策定が目的の場合:航空レーザーによる広域スキャンが効率的
  • J-クレジット申請や高付加価値材の評価が目的の場合:ドローンや地上レーザーによる個体レベル計測が有効

さらに、単発調査で完結するのか、5年ごとのモニタリングで成長量を追跡するのかといった「時間軸」の設計も重要です。継続的なデータ取得を前提とした計画であれば、初期設計段階から将来の比較分析を見据えた仕様検討が必要になります。

専門人材の確保

LiDARの価値は、取得データをどのように解析し、意思決定につなげるかで決まります。データ取得よりも、解析・活用フェーズに高度な専門性が求められます。

具体的には、次の両輪が必要です。

  • 点群処理やアルゴリズム設計を担う測量・IT分野の専門技術
  • 樹種特性、施業体系、法規制を理解する林業分野の専門知識

これらを自社単独で整備することは容易ではありません。そのため、空間情報解析の実績を持ち、林業実務にも精通した専門パートナーと連携することが、導入リスクを抑え、確実に成果を上げる近道となります。

LiDARデータを用いたアジルジオデザインの技術力

生の点群データを、実務に活用できる「資産」へ変換することこそが解析工程の本質です。アジルジオデザインでは、点群データ等の獲得に必要な現場作業における最適な機材を提供しています。これら機材を活用することで、高度なアルゴリズムと林業知見を統合した解析フローを確立することができます。

これにより、

  • 森林資源量の定量把握
  • 炭素蓄積量の算定
  • 路網設計支援
  • 経営判断を支える可視化ダッシュボードの構築

を一貫して実現できます。

経営者や行政担当者が迅速かつ正確に意思決定できる環境を整えることが、LiDAR導入の最終目的であり、その実装まで支援できる点が強みです。

まとめ

LiDARの導入は、森林管理を経験依存型からデータ駆動型へと転換する決定的な一手です。単なる測量手法の高度化ではなく、森林を「可視化された経営資源」へと変えるパラダイムシフトといえます。

LiDARは、従来の目視や航空写真では把握できなかった地表の微地形や、立木一本一本の位置・樹高・構造を三次元で正確に描き出します。これにより、森林の実態をデジタル空間上に再現できるようになり、路網設計、防災評価、資源量把握といった実務の精度と効率が飛躍的に向上します。

さらに、その価値は木材生産の最適化にとどまりません。高精度なバイオマス推定はJ-クレジットにおける信頼性の高いエビデンスとなり、森林のCO2吸収量を経済価値へと転換します。また、多層構造の解析により生物多様性の状況を定量化できるため、ネイチャーポジティブや環境開示といった新たな評価軸にも対応可能です。森林は、単なる資源供給の場から、多様な環境価値を生み出す資本へと再定義されつつあります。

現在、ハードウェアの普及と解析AIの進化により、LiDARは自治体や民間企業にとって現実的な選択肢となりました。この技術を戦略的に活用できるかどうかが、今後の森林経営の競争力を左右します。

アジルジオデザインでは、最先端のLiDAR計測技術と空間情報解析の知見を融合し、森林資源の可視化からカーボンクレジット対応、スマート林業の実装まで一貫して支援しています。森林経営の高度化をご検討の際は、ぜひご相談ください。

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