GNSS(Global Navigation Satellite System)を活用すれば、森林測量の作業効率と測位精度を大きく高めることが可能です。
これまで森林測量は、木々に視界を遮られる環境下で行われるため、膨大な人手と時間、そして熟練の技術が必要とされてきました。しかし、GNSSの活用により、位置情報を高精度に数値化し、効率的かつ正確なデータ収集が実現できます。
とはいえ、現場の環境や用途に応じて最適なGNSSの方式を選ぶには、ある程度の知識と判断力が求められます。今回は、森林測量で使われるGNSSの基本から各方式の特徴、メリット・注意点までをわかりやすく解説します。
記事を読むことで、GNSS測量の全体像が理解でき、現場に応じた最適な導入判断が可能になります。森林測量の精度向上や作業効率化を図りたい方は、ぜひ最後までご一読ください。
森林測量で注目されるGNSSとは
森林測量の効率化と精度向上を実現する技術として、衛星測位システムであるGNSSが注目されています。
森林の現場は視界が限られており、位置の特定には時間と労力がかかるうえ、経験豊富な技術者の存在が不可欠でした。GNSSを活用すれば、これらの課題を解消しながら、デジタルかつ正確な測位を可能にします。
ここでは、GNSSの基礎知識と、よく知られているGPSとの違いについて解説します。
GNSSとは
GNSS(Global Navigation Satellite System)は、人工衛星から発信される電波を利用して、地球上の現在位置を把握するための測位技術です。広範囲にわたる高精度な測量が可能なことから、建設・土木・農業など、さまざまな分野で活用が進んでいます。
とりわけ森林のように視界が悪く従来の測量が難しい現場では、GNSSを導入することで作業効率と位置情報の正確性が飛躍的に向上します。
GNSSの仕組みとGPSとの違い
GNSSは、複数の国が運用する衛星測位システムの総称であり、代表的なものとして次のような種類が存在します。
- GPS(アメリカ)
- GLONASS(ロシア)
- Galileo(ヨーロッパ)
- BeiDou(中国)
- みちびき(日本)
このうちGPSは最も広く知られていますが、単一の衛星群からしか信号を受信できず、測位精度が安定しない場合があります。森林のように高精度が求められる環境では、複数の衛星システムを併用し、安定的に位置情報を取得できるGNSSの利用が有効です。
森林測量で使われるGNSSの種類と特徴
森林測量では、目的や現場環境に応じて複数のGNSS方式が使い分けられています。ここでは、代表的な5つの測位方式について、それぞれの特徴や森林内での適性を比較しながら解説します。
|
GNSS方式 |
特徴 |
| 単独測位(GPSなど) |
単独の衛星を受信 |
|
DGNSS(Differential GNSS) |
基準局で誤差を補正 |
| RTK(Real Time Kinematic) |
リアルタイムで補正 |
|
みちびき |
日本の衛星を活用 |
| CLAS(Centimeter Level Augmentation Service) |
みちびき衛星からの補正信号を活用 |
GNSS(単独測位)
単独測位は、GPSなど単一の衛星システムからの信号に基づいて位置を算出する最も基本的な方式です。
通信設備が不要で手軽に導入できる点がメリットですが、森林では木々によって電波が遮られやすく、誤差が数mに達することもあります。そのため、精度が求められる現場では、他の測位方式との併用が効果的です。
DGNSS(補正GNSS)
DGNSS(Differential GNSS)は、既知の位置にある基準局から送られる補正データを用いて測位精度を高める方式です。
単独測位に比べて誤差が小さく、数m未満の精度が得られるため、森林内の測量にも現実的に利用されています。ただし、補正情報を受信するには、通信機能を備えた端末や基地局との接続が必要です。
RTK(リアルタイムキネマティック)
RTK(Real Time Kinematic)は、基準局とのリアルタイム通信により、数cm単位の高精度測位を実現できる方式です。構造物の設置や地籍調査など、精度が求められる業務で活用されており、非常に信頼性が高い手法です。
ただし、通信環境への依存度が高く、山奥などモバイル電波が届きにくい場所では使用が難しい点に注意が必要です。
みちびき(日本の測位衛星)
みちびきは、日本の上空を重点的にカバーする準天頂衛星システム(QZSS)です。
日本国内では、山間部や都市の高層ビル群の間でも衛星信号を受信しやすく、安定した測位が可能です。GPSと併用することで精度がさらに向上し、森林測量にも適した構成となっています。
CLAS(センチメータ級測位補強サービス)
CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)は、みちびきが提供するcm級の補正信号を活用する測位サービスです。専用の受信機を使用することで、RTKと同等の高精度な測位が可能になります。
外部の通信回線を使わずに衛星から直接補正情報を受信できるため、通信インフラが整っていない山間部でも安定した精度を確保できます。
森林でGNSSを使うメリット
森林測量にGNSSを活用することで、位置情報を数値として高精度に取得でき、従来のアナログ方式と比べて多くのメリットが得られます。ここでは、現場業務において特に有効なGNSSの代表的なメリットを紹介します。
- 高精度で正確な位置がすぐに把握できる
- 測定結果をデジタルで管理できる
- 他のICT機器と容易に連携できる
- チームでの作業を効率化・標準化できる
高精度で正確な位置がすぐに把握できる
GNSSを活用することで、現場でリアルタイムに正確な座標を取得でき、作業効率が大きく向上します。たとえば、次のような効果があります。
- 境界線や面積測定の精度が高まり、作業の信頼性が向上する
- 記録したポイントに正確に戻ることができる
- 確認ややり直しの手間が減少し、作業時間を短縮できる
こうした精度の高さは、森林の区画管理や資源量の調査など、細かな位置情報が求められる業務で特に役立ちます。
測定結果をデジタルで管理できる
GNSSで取得した位置情報は自動的に数値データとして記録されるため、紙の記録や手入力に比べて作業効率が向上します。次のようなメリットがあります。
- 測定結果をそのまま報告書やGIS地図に活用できる
- 現地での確認や移動がスムーズになり、迷いが少なくなる
- 作業手順が標準化され、ベテランと新人のスキル差が目立ちにくくなる
GNSSは、精度と作業効率の両面で現場の測量業務を支える技術です。
他のICT機器と容易に連携できる
GNSSで取得した位置データは、さまざまなICT機器とスムーズに連携でき、作業の高度化を後押しします。連携可能な機器の例としては、次のようなものがあります。
- スマートフォン
- タブレット
- GISソフト
- ドローン
たとえば、スマートフォンやタブレットに専用アプリを導入すれば、その場で座標を取得したり地図を表示したりできます。GISソフトと連携すれば、測量結果から森林の資源マップや境界図を効率よく作成することも可能です。
チームでの作業を効率化・標準化できる
GNSSの活用は、チームでの作業効率や品質の均一化にもつながります。測定地点の座標を共有すれば、作業者同士が正確な位置を把握しながら作業を分担でき、記録や確認も共通の基準で行えます。
その結果、作業の標準化が進み、品質管理の強化にも寄与します。また、熟練者の経験に頼らずとも新人が正確に位置を把握できるため、教育や研修の面でも有効です。
森林でGNSSを使う際のデメリット・課題
GNSSは森林測量を効率化する有効な手段ですが、使用環境によっては精度や運用面での制約が生じることもあります。特に森林のような複雑な地形や天候の変化が激しい現場では、予期せぬ誤差や実務上の課題が発生する可能性があります。
ここでは、森林におけるGNSS利用時に注意すべき主なリスクを4つ解説します。
- 木が茂る場所では電波が届きにくい
- 地形や天気によって誤差が出やすい
- 山奥では通信が弱く使いにくいことがある
- 機器の導入コストがかかる
木が茂る場所では電波が届きにくい
森林内では、枝葉が密集して上空を覆うため、GNSSの電波が届きにくくなる傾向があります。これにより、受信機が十分な数の衛星を補足できず、位置精度が大きく低下したり、そもそも測位が成立しなかったりすることがあります。
さらに、衛星からの電波が樹木や岩などに反射して誤った位置を示す「マルチパス現象」も発生しやすく、特に密林では注意が必要です。
地形や天気によって誤差が出やすい
山の斜面や谷間など、周囲に遮蔽物が多い場所では、空が見えにくくなり衛星信号の受信が不安定になります。加えて、雷雨・降雪・濃霧といった気象条件は、電波の減衰や乱反射を引き起こし、測位精度をさらに悪化させる要因となります。
そのため、現地の地形や気象を事前に確認し、補正精度の高い方式や機器を選んだり、測量の時間帯を工夫したりすることが重要です。
山奥では通信が弱く使いにくいことがある
RTKをはじめとする高精度GNSSは、補正情報をリアルタイムで受信するために、安定した地上通信環境が必要です。しかし、山奥などモバイル電波が届かないエリアでは補正信号を受信できず、測位精度が大きく低下する可能性があります。
このようなケースでは、機器自体の性能よりも、電波インフラの有無がボトルネックとなるため、事前の通信環境の確認と方式の選定が欠かせません。
機器の導入コストがかかる
GNSS測量を導入するには、受信機やアンテナ、専用の測量アプリケーションなどの機器が必要です。簡易なモデルであっても数万円、本格的なRTKやCLAS対応機器では数百万円から数千万円規模になることもあります。
さらに、通信装置や解析ソフトの導入を含めれば、初期費用はさらに増大します。そのため、導入にあたっては機器の選定とコストパフォーマンスを慎重に見極めることが重要です。
森林でのGNSSの主な活用例
GNSSは単なる測位手段にとどまらず、森林現場のさまざまな業務を支える実用的なツールとして活用されています。最後に、実際の森林管理や調査においてGNSSが役立っている代表的な活用シーンを紹介します。
- 森林面積や立木の本数を把握する
- 境界線や林道の位置を確認する
- ドローンと組み合わせた空撮・測量に使う
森林面積や立木の本数を把握する
森林調査の基本は、対象エリアの面積と立木本数の正確な把握にあります。GNSSを使えば、現場で区画の位置や範囲を精密に記録でき、面積の算出ミスを防ぐことが可能です。
また、地点ごとの座標を記録しておくことで、立木の本数や材積をエリア別に分類・管理でき、データの整理や可視化にも役立ちます。こうした情報は、将来的な再調査や資源計画の見直しに活用でき、持続可能な森林経営を支える基盤となります。
境界線や林道の位置を確認する
森林には私有地・公有地の区分が存在するため、境界を明確に把握することは法的にも実務的にも重要です。
GNSSを使えば、境界線の座標を正確に記録・保存でき、現場での位置確認もスムーズに行えます。これにより、境界を巡るトラブルの未然防止にもつながります。
さらに、林道や作業道の位置もあらかじめ記録しておけば、後の修繕や拡張工事の際に過去のデータを参照することで、計画の精度と安全性が向上します。
ドローンと組み合わせた空撮・測量に使う
近年では、GNSSとドローンを組み合わせた空中測量が普及しており、広大な森林全体の把握が可能となっています。GNSSを活用することで、ドローンの飛行ルートや撮影ポイントを高精度で制御できるため、撮影ミスが減り、安定した画像データの取得が可能です。
取得した画像に位置情報を重ね合わせることで、立体的な森林モデルや航空写真地図の作成にも応用でき、地上からでは確認しづらい地形や林相も把握しやすくなります。
まとめ
森林測量にGNSSを導入することで、位置確認や面積測定といった従来のアナログ作業をデジタル化し、作業の効率性と測位の精度を大幅に向上させることが可能になります。現場での作業時間を短縮できるだけでなく、ミスや手戻りを減らすことで全体の生産性や安全性の向上にもつながります。
GNSSには、単独測位・DGNSS・RTK・みちびき・CLASといった複数の測位方式があり、それぞれに精度や通信要件、コストなどの違いがあります。森林という特殊な環境において最適な方式を選択するには、技術の特性を理解したうえで、現場の通信状況や測量目的に合わせて判断することが重要です。
また、GNSSの活用には、電波の届きにくさや地形・気象の影響、通信インフラの制約、機器導入コストといった注意点も存在します。こうした課題もふまえ、事前の調査と適切な機器選定を行うことで、より安定した測量業務を実現できます。
GNSSは、森林資源の把握や境界管理、ドローン測量との連携など、現場の幅広いニーズに対応する測位技術です。測量が困難な森林地でも、GNSSを効果的に活用することで、長期的な森林経営や資源管理における信頼性を高められます。
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