GNSS測位は社会基盤を支える重要な技術ですが、単独利用では数メートル規模の誤差が避けられず、高精度が求められる現場では限界があります。その課題を解決するのが、リアルタイム補正によりセンチメートル精度を実現するRTK(Real Time Kinematic)です。
今回は、RTKとGNSSの基本的な仕組みから高精度測位の利点、さらに建設、ドローン測量、スマート農業、自動運転といった分野での具体的な活用例を解説します。高精度測位を導入検討する企業にとって、効率化と競争力向上につながる実践的な知見を得られる内容です。
GNSS測位の課題
GNSSはGPSを含む衛星測位システムの総称であり、複数の衛星を組み合わせれば高精度な測位が可能とされています。しかし、実際の現場では環境や技術的制約によって誤差が生じ、精密な作業に十分対応できないという大きな課題があります。ここでは、GNSS測位の主な課題について解説します。
衛星測位は電離層や地形の影響で誤差が生じる
GNSS測位は衛星からの電波到達時間を利用しますが、大気を通過する際に電離層や対流圏の影響を受け、電波が屈折・遅延します。その結果、理論値との差が生まれ、数メートル規模の誤差が発生します。農業や一般的なナビゲーションでは許容できても、橋梁工事や高層建築の施工では致命的です。
マルチパスや遮蔽物によって精度が低下する
都市部ではビル群、山間部では樹木や地形が衛星信号を遮断・反射します。これがマルチパス現象であり、誤った経路を通った信号を受信すると測位結果が大きく乱れます。狭い谷や高層建築の近くでは正確な位置情報が得られず、測量や施工管理の信頼性を損なう要因となります。
衛星配置の状況によって測位の安定性が左右される
GNSSは複数衛星を捕捉することで精度を確保しますが、衛星数が少ない場合や空の一部に偏る場合には幾何学的精度が低下します。特に視界の制限が大きい環境では利用可能な衛星が減り、測位の安定性が損なわれます。
単独測位ではセンチメートル精度を実現できない
GNSS単独測位では誤差が数メートルに及び、ドローン航測や農業機械の自動走行に必要な「数センチ単位の精度」は不可能です。従来は後処理型の高精度測位や地上基準点を多用して補ってきましたが、現場で即時に高精度を得られない点が依然として課題となっています。
RTKの特長
RTKはGNSS測位の誤差を克服し、センチメートル単位の高精度を実現する技術です。建設や土木、農業、ドローン測量、自動運転など、精度が業務効率や安全性に直結する分野で不可欠な存在となっています。ここでは、RTKの仕組みと主要な特長について解説します。
基準局と移動局の差分補正で高精度を実現できる
RTKの核心は、基準局と移動局の間で差分補正を行う点にあります。
基準局は正確な座標に設置され、受信した衛星信号と実際の位置との差を計算し、移動局に誤差情報を送信します。移動局はこれを利用して単独測位の数メートルの誤差を数センチまで縮小できます。
その結果、これまで後処理で対応していた高精度測量を現場でリアルタイムに行うことができ、業務効率を大幅に改善できます。さらに、大気の影響や電波遅延も補正できるため、都市部や山間部といった環境下でも安定した精度を確保できます。
リアルタイムで測位データを補正できる
従来はGNSSデータを収集後に解析・補正する必要があり、時間と人員を要しました。RTKではデータ取得と同時に補正が行われ、正確な位置情報を即時に利用できます。
建設現場での土工事や造成工事では、作業車両の位置をその場で把握し、即座に指示を出せるため、誤差を最小限に抑えつつ安全性と効率を両立できます。ドローン測量や農業用トラクターの自動走行でも同様に、作業精度とスピードを同時に向上させる効果があります。
通信環境によって柔軟に導入できる
RTKの補正データは、UHF無線、LTE/5G、インターネットなど多様な通信手段で配信可能です。これにより、都市部のインフラ工事ではLTE回線を、山間部のトンネル施工や森林測量ではUHF無線を利用するなど、現場の環境に合わせた柔軟な導入が可能です。環境に応じた最適な通信手段を選べる点は、RTKが幅広い分野で普及している理由の一つです。
従来のGNSS利用よりも効率的に運用できる
単独測位では誤差による再測量や後処理が避けられず、工期や人件費の増加につながっていました。RTKを導入すれば、現場で即時に高精度な位置情報が得られるため、作業のやり直しが不要となり、工期短縮とコスト削減を両立できます。測量や施工だけでなく、ドローンや自動運転の分野においても業務全体の効率化を強力に後押しする点がRTKの大きな優位性です。
RTKとGNSS技術の両方の活用が重要視される理由
高精度かつ安定した測位を実現するには、GNSS単独測位にRTK補正を組み合わせることが不可欠です。両者を併用することで、単独測位では達成できない精度と信頼性を確保でき、現場の生産性や安全性を大きく向上させられます。ここでは、RTKとGNSSの両方を併用することが重要である主な理由について解説します。
従来のGNSS測位では誤差が数メートル残るから
GNSS単独測位は電離層や建物、地形の影響を受け、数メートル規模の誤差が生じます。これでは、施工管理や農業機械の自動走行には不十分です。
RTKを併用すれば、誤差を数センチに抑えられ、道路や橋梁の施工、精密農業やドローン測量といった現場で求められる精度を満たすことができます。
RTKにより高精度測位で測量や施工の効率が向上するから
RTKはリアルタイムで補正を行うため、従来必要だった後処理が不要になります。これにより、現場での判断が迅速化し、土工事や基礎工事の精度向上と効率化が同時に実現します。
さらに、ドローン測量では航空写真や3Dマップを即座に取得でき、測量時間の短縮や人件費削減に直結します。
誤差の少なさが安全性や信頼性に直結するから
数センチ単位の誤差は、安全性が最優先される自動運転や橋梁工事において極めて重要です。精度が高ければ、車両の衝突リスクや施工ミスを大幅に抑えられます。
さらに、災害対応やインフラ点検においても誤差の少ないデータは信頼性を高め、被災地の建物損傷評価や道路の安全確認といった場面で迅速かつ的確な意思決定を支えます。
RTK-GNSSの実用分野への活用
RTK-GNSSはセンチメートル精度の測位を可能にすることで、建設、ドローン測量、スマート農業、自動運転といった幅広い分野で実用化が進んでいます。ここでは、各分野での具体的な活用事例を紹介します。
建設分野
道路や橋梁、造成地の施工では図面通りの高精度な作業が欠かせません。従来は測量結果を基に手作業で調整していたため、やり直しや人手の増加が課題でした。
RTKを導入すれば、現場で即座に位置を確認でき、誤差を数センチに抑制可能です。これにより施工精度の向上、安全性の確保、工期短縮を同時に実現できます。
さらに、施工データをクラウドに送信することで、現場と事務所の情報共有もスムーズになります。
ドローン測量分野
従来の航空写真測量や3Dマッピングでは、基準点を設置し後処理で精度を補正していました。しかし、RTK対応ドローンを活用すれば現場でリアルタイムにセンチ単位の精度を確保できます。
これにより広域の地形データを迅速に取得でき、測量時間を半分以下に短縮可能です。加えてデータ精度の向上により、施工計画の修正や変更にも即応できます。
スマート農業分野
自動走行トラクターや農薬散布機では、数メートルの誤差でも効率低下や資材の無駄が生じます。RTK-GNSSを導入すれば畑の一列単位で正確に制御でき、作業効率向上と資材節約を同時に達成できます。さらに、農業用ドローンによる精密散布や収量調査でも精度と効率が大きく改善され、農業のDX推進を支える技術となります。
自動運転分野
自動運転車両や物流ロボットでは、正確な位置情報が安全走行に直結します。GNSS単独測位では誤差が大きすぎるため制御に支障をきたしますが、RTK-GNSSを活用すればリアルタイムで数センチ精度を確保でき、安全かつ効率的な走行が可能です。
さらに、都市部や狭小道路で発生するマルチパスも補正でき、実運用での信頼性が飛躍的に高まります。
RTK-GNSSの導入が企業にもたらす効果
RTK-GNSSを導入すれば、企業は業務効率や信頼性、コスト削減、新規事業展開など多面的なメリットを得られます。最後に、RTK-GNSSの導入により得られる主な効果を解説します。
少人数でも大規模業務を効率的に進められる
高精度測位により、従来は複数人で行っていた作業を少人数で完結できます。広大な造成地の測量やドローンによる航空測量でも、人員削減と作業効率向上を同時に実現可能です。
成果物の正確さが顧客や投資家の信頼につながる
精度の高い施工・測量データは、顧客や投資家に対する信頼を高めます。正確な成果物は企業のブランド力を強化し、受注拡大や新規事業開拓の確かな基盤となります。
人件費や工期を削減できるから
再測量や後処理の必要が減ることで、人件費や機材費、工期を大幅に削減できます。施工ミスによるやり直しや計画変更のリスクも減少し、経営効率の向上に直結します。
新規分野への事業展開を支えられる
RTK-GNSSは、自動運転やスマート農業、ドローン測量など新しい分野の成長を支える基盤です。高精度測位により従来は手作業や後処理に依存していた業務も効率化され、新規事業の立ち上げや拡張が容易になります。
まとめ
RTK-GNSSは従来のGNSS測位に残されていた「数メートルの誤差」という課題を解消し、センチメートル単位の高精度を実現しました。その結果、建設現場での施工管理の効率化、ドローンによる迅速で正確な測量、スマート農業での自動走行や精密散布、自動運転の安全性向上など、幅広い分野で革新的な成果をもたらしています。
さらに今後は、5Gやクラウドとの連携、低軌道衛星の普及といったインフラ整備の進展により、活用の幅は一層拡大していくと考えられます。
当社アジルジオデザインでは、測量・土木・ロボティクス・GIS分野における計測技術導入を総合的に支援し、RTKやGNSSをはじめとする最新技術にも対応しています。ハードウェアとソフトウェアの両面から最適なソリューションを提案し、現場ごとの課題解決を実現します。
RTKやGNSSを含む測量・土木・位置情報技術に関するご相談は、ぜひアジルジオデザインへお気軽にお問い合わせください。




