SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は、ロボットやドローンが自己位置を推定しながら環境の地図を生成する技術であり、その中でも3D SLAMは現代の測量・計測や自律移動を支える核心的な存在です。高さや奥行きを含む立体的な地図を作成できるため、従来の2D SLAMでは不十分だった段差や斜面、複雑な建物構造、さらにはGPSが届かない地下空間でも高い効果を発揮します。

センサー性能の向上と計算資源の拡充により、研究段階にあった3D SLAMは産業利用へ急速に広がり、測量、インフラ点検、自動運転、ロボティクスといった分野で欠かせない技術となりました。今回は、3D SLAMの仕組みや代表的なアルゴリズムから、活用事例、導入メリットとリスク、さらに導入の具体的ステップまでを網羅的に解説します。

3D SLAMとは?

3D SLAMは、従来の2D地図では表現できない三次元空間の構造を把握しながら自己位置を推定できる技術であり、測量や自律移動を支える基盤です。まずは、3D SLAMの基本概念と2D SLAMとの違いについて解説します。

SLAMの基本概念

SLAMとは、「自己位置推定」と「環境地図作成」を同時に行うことで、未知の環境でもロボットが安定して移動できるようにする技術です。自己位置推定だけでは地図がなければ移動できず、逆に地図作成だけでは現在地がわからないため、いずれも単独では実用になりません。両者を並行して処理することで、位置情報を補完し合いながら正確な地図を描き続けられることが最大の特徴です。

従来の2D SLAMは、平坦な床面を持つ倉庫や工場で十分に機能してきました。しかし、現実には段差や傾斜、天井の高さの違い、複雑な構造を持つ空間が多く存在し、二次元では限界があります。そこで求められるのが、三次元でのマッピングと自己位置推定を可能にする3D SLAMです。

近年はレーザースキャナや高解像度カメラの進化、GPUや専用ハードの普及により、大量のセンサーデータをリアルタイムに処理できる環境が整いました。その結果、研究段階にあった3D SLAMは、測量、インフラ点検、自動運転、ロボティクスといった幅広い産業現場へ急速に導入が進んでいます。

3D SLAMの仕組み

3D SLAMは、次の4ステップで構成されます。

  • センサー計測
  • 特徴点抽出
  • 地図生成
  • 自己位置更新

まず、LiDAR、カメラ、RGB-Dカメラ、IMUなどを用いて環境を計測します。LiDARは高精度な点群データを生成し、ステレオカメラは2視点から奥行きを推定し、RGB-Dカメラは色情報と深度情報を同時に取得します。IMUは加速度や角速度を計測し、他センサーを補完します。

次に、計測データから特徴点を抽出し、それを基にロボットは自己位置を計算します。その後、点群や特徴点を統合して立体地図を生成し、移動ごとに情報を更新します。最後に、生成された地図とセンサーデータを照合しながら自己位置を逐次修正することで、移動中も位置精度を確保し、同時に地図も精緻化されます。

センサー選定も重要で、LiDARは暗所や広域測量に強く、ステレオカメラやRGB-Dカメラは低コストで情報量が豊富なため、室内用途に適しています。IMUは位置推定の安定性を補強します。これらを組み合わせることで、ドローンやロボットは未知の環境を自律的に探索し、安全かつ効率的に作業を進められるのです。

3D SLAMの種類とアルゴリズム

3D SLAMは利用するセンサーや計算手法によって大きく特性が異なり、代表的な方式としてLiDARベースとビジュアル(カメラ)ベースが存在します。ここでは、それぞれの特徴と代表的なアルゴリズムを解説します。

LiDARベースの3D SLAM

LiDARを活用した3D SLAMは、三次元の点群データを高精度に取得できることが最大の強みです。レーザー光の反射時間から対象までの距離を算出するため、環境の形状を詳細に把握でき、夜間や暗所など照明条件が悪い環境でも安定して利用できます。

代表的なアルゴリズムはLOAM(Lidar Odometry and Mapping)で、高速かつ高精度に自己位置推定と地図生成を実現します。また、その軽量版であるLeGO-LOAMは、計算資源が限られる移動ロボットやドローンでも高精度なマッピングを可能にします。

これらは広域測量やインフラ点検、屋外での自律走行に適しており、複雑な構造物の解析にも有効です。ただし、LiDARはコストが高く、搭載時に重量増を伴う点は導入検討時の課題となります。

ビジュアル(カメラ)ベースの3D SLAM

カメラを利用するビジュアルベースの3D SLAMは、低コストで導入でき、色情報や模様などの付加的データも得られる点が魅力です。そのため、室内や建物内部のマッピング、さらにはAR/VR領域で幅広く活用されています。

代表的なアルゴリズムには、ORB-SLAM3があり、モノカメラ、ステレオカメラ、RGB-Dカメラに対応し、特徴点の抽出と追跡によって精度の高い自己位置推定とマッピングを実現します。また、DSO(Direct Sparse Odometry)は輝度値を直接利用する手法で、特徴点に依存せず環境認識が可能です。

ビジュアルSLAMは情報量が豊富で低コストというメリットがある一方、照明条件や動的物体の影響を受けやすく、暗所や逆光下では精度低下が避けられません。そのため、実環境では補助センサーとの組み合わせが効果的です。

3D SLAMの活用事例

3D SLAMは測量や点検、自律走行といった現場の課題を解決する実践的な技術として、ドローンやロボットに幅広く導入されています。ここでは代表的な活用シーンを紹介します。

ドローンによる測量、インフラ点検

ドローンに3D SLAMを搭載することで、橋梁やトンネル、建築現場といった従来は足場やクレーンが必要だった場所でも、安全かつ効率的に計測が可能です。LiDARやRGB-Dカメラを用いて点群データを取得し、リアルタイムで三次元マップを生成するため、作業時間を大幅に短縮でき、人件費削減にもつながります。

さらに、自律飛行により障害物を回避しながら精密に移動できるため、複雑な構造物や狭所の測量にも対応可能です。橋梁点検では、橋桁の裏側や高架下を詳細に可視化し、補修箇所の特定を迅速に実現します。

従来は数日を要した作業が数時間で完了することもあり、インフラ管理の精度向上とコスト削減、さらに作業者の安全確保を同時に達成できます。

ロボット、AGVの自律走行

物流倉庫や工場でも3D SLAMは不可欠です。棚や障害物の配置が頻繁に変わる環境では静的な地図だけでは安定走行が困難ですが、3D SLAMによりロボットは移動中に環境を認識し、自己位置を推定しながら最適ルートを選択できます。たとえば、AGVはピッキングルートを自律的に計算し、障害物や他の移動物体を避けながら効率的に作業を進められます。

これにより人手の負担を軽減し、業務効率が向上するだけでなく、危険エリアを回避することで安全性も高まります。さらに、立体的なマップデータを活用すれば、棚の高さや物量を正確に把握でき、在庫配置や搬送経路の最適化が可能です。結果として物流や製造現場全体の効率を大幅に改善できる点が大きな強みです。

3D SLAM導入のメリットと導入しないリスク

3D SLAMを導入することは、効率化・コスト削減・安全性向上のすべてに直結する一方、導入を見送れば競争力を損なうリスクがあります。ここでは、3D SLAMを導入するメリットと、導入しないことのリスクについて解説します。

導入メリット

3D SLAMを導入することで得られる最大の効果は、作業効率の向上です。

従来の測量や点検は人手での計測や歩行が必要で、広範囲の調査では時間と労力が膨大でした。3D SLAMを搭載したドローンやロボットであれば、自律移動しながらリアルタイムに環境データを収集できるため、作業時間を大幅に短縮できます。さらに、同時に地図生成が行えることで現場作業とデータ取得を並行でき、業務全体の効率が飛躍的に向上します。

また、人件費削減も大きなメリットです。これまで複数人が必要だった測量や点検を少人数で対応できるため、特に高所や危険環境では作業員を現場に配置する必要がなく、安全確保とコスト削減を両立できます。

また、橋梁点検やトンネル測量、災害現場といった危険エリアでも、3D SLAMを活用すればドローンやロボットで安全に計測が可能です。事故リスクの低減と作業者保護は導入効果の重要なポイントです。

加えて、3D化されたデータは高度な分析を可能にします。補修計画の精度向上、物流ルートの最適化、災害リスク評価など、2Dデータでは得られなかった立体的な情報を活用でき、計測を超えて戦略的な意思決定の基盤を築くことができます。

導入しないリスク

一方で、3D SLAMの導入を見送ってしまうと、明確な不利益が生じます。

まず、競合との差です。多くの企業が既に自律計測を導入して効率化と安全性向上を実現しており、従来手法にとどまれば精度や作業スピードで遅れを取る可能性があります。

また、人手不足が深刻化する建設・物流・インフラ分野では、少人数で現場を回す効率性が不可欠です。3D SLAMなしでは従来の人員依存型の作業に縛られ、現場対応力の低下を招きます。さらに、手作業や2Dベースでは誤差や更新遅延が避けられず、精度やスピードの限界に直面します。

総じて、3D SLAMは効率化・安全性・データ活用を飛躍的に高める技術であり、導入しないこと自体が大きなリスクです。現場業務の高度化とデジタル化を進めるためにも、早期導入が競争力維持の鍵となります。

3D SLAM導入の流れ

3D SLAMを確実に導入するためには、段階的に計画を進めることが成功の鍵です。次の4ステップを押さえることで、現場に適したシステムを構築できます。

  1. 要件定義
  2. 技術選定
  3. プロトタイプ検証
  4. 現場実装テスト

1.要件定義

まず、導入の目的を明確化します。測量業務の効率化やロボット・ドローンの自律走行など、現場で達成したい成果を具体的に整理することが出発点です。

そのうえで、精度要件を設定します。自己位置推定の誤差許容範囲やリアルタイム性の必要度を定義し、たとえば橋梁点検のようにミリ単位の精度が求められるケースでは、より高精度なセンサーとアルゴリズムが不可欠です。

さらに、取得データの出力形式を決める必要があります。CADやBIM、GISとの連携が前提であれば、互換性を考慮した形式を選択します。

また、稼働頻度や運用時間に応じて、24時間対応なのか定期作業中心なのかを踏まえ、最適なハードウェア・ソフトウェア構成を検討します。これらを通じて、現場要件に即したシステムの基盤が固まります。

2.技術選定

次に、センサーとアルゴリズムの選定です。LiDAR、ステレオカメラ、RGB-Dカメラ、IMUなどから用途や環境に応じた最適な構成を決定します。精密な点群マッピングが必要ならLOAMやLeGO-LOAM、コストを抑えつつ室内利用を重視するならORB-SLAM3やDSOが有力候補です。

また、処理方式も重要で、リアルタイム性を優先するか、あるいは精密さを優先するかで最適な計算環境が異なります。加えて、CPUやGPU性能、メモリ容量、耐環境性能を考慮し、長時間の稼働や屋外利用に耐えられる機材を選びます。そして、開発プラットフォームや将来的な拡張性も見据えた判断が求められます。

3.プロトタイプ検証

技術を選定したら、小規模なプロトタイプ検証を行います。屋内で初期の位置精度を確認し、動的な障害物による影響やマップ再現性をテストします。

同時に、処理遅延やリアルタイム性を検証し、外乱の多い環境でも安定して動作するか確認します。これにより、本格導入前にシステムの安定性と性能の妥当性を見極められます。

4.現場実装テスト

最後に、実際の現場条件で検証を行います。屋内外や高低差のある場所、狭所などでセンサーの安定性と位置推定精度を確認し、障害物や移動体がある状況でもリアルタイム処理が確実に行えるかを評価します。

加えて、データ出力や既存システムとの連携性をチェックし、耐久性や稼働安定性を検証します。保守やメンテナンスの容易さも確認し、運用上の課題を洗い出すことで、安全かつ確実に実務へ導入可能なシステムへと仕上げることができます。

まとめ

3D SLAMは、測量やインフラ点検、ロボットやドローンの自律走行、さらにはAR/VRの空間認識まで幅広く応用される革新的な技術です。従来の2D測量や人手中心の作業と異なり、自己位置の推定と環境地図の生成を同時かつリアルタイムで行えるため、効率性・精度・安全性のすべてを大きく向上させます。特に広範囲の屋外測量、複雑な構造物の点検、物流や製造現場での自律移動など、現場が抱える課題解決においてその効果は明確です。

導入のメリットは、作業効率の飛躍的な向上や人件費削減にとどまらず、危険なエリアへの立ち入りを減らす安全性の確保や、三次元データを活用した高度な分析による意思決定の精度向上にも及びます。一方で導入を見送れば、競合他社との技術差拡大や人手不足下での現場対応力の低下、さらに2Dやアナログデータに依存することによる精度・速度の限界といったリスクが避けられません。したがって、業務の高度化やデジタル化を進め、競争力を維持するためには早期導入が極めて有効です。

また、確実に成果を得るためには、要件定義から技術選定、プロトタイプ検証、現場実装テストへと段階的に進めることが重要です。目的に即したセンサーやアルゴリズムの選択、リアルタイム性や精度の確保、さらに既存システムとの連携を意識した検証を行うことで、安定稼働する3D SLAMシステムを構築できます。

当社アジルジオデザインは、測量・土木・ロボティクス・GIS分野における計測技術の導入を総合的に支援しており、ビジュアルSLAMに関するご相談にも対応可能です。ハードウェアとソフトウェアの両面から最適な提案を行うシステムインテグレーターとして、現場の課題解決に直結するソリューションをご提供します。

3D SLAMをはじめ、測量・土木・位置情報技術に関するご相談は、ぜひアジルジオデザインへお気軽にお問い合わせください。

関連記事はこちら

  • ハンディ3Dスキャナーの特徴|導入メリットと活用事例をわかりやすく解説
    2025年10月30日||SLAM||

    【2025】ハンディ3Dスキャナーの特徴|導入メリットと活用事例をわかりやすく解説

  • 3Dレーザースキャナーとは|仕組み、測量の精度、メリット・デメリットを解説
    2025年10月30日||SLAM||

    【2025】3Dレーザースキャナーとは|仕組み、測量の精度、メリット・デメリットを解説